ふわっ・・・

不意に後ろから抱きしめられる。

目を開けると・・・大きな影。

この、暖かい匂いは・・・悠志郎。

  「美月?お願いごとですか?」

優しく問いかけられる。

  「うん。願を掛けてたんだ」

暖かい腕に身を任せて、そう答える。

  「そうですか」

  「悠志郎もしない?」

  「願掛け・・・ですか?」

  「うん」

  「まぁ・・・宮司が願を掛けるのも如何なものかと・・・」

  「そう?別に良いと思うけど?」

  「そう・・ですかねぇ・・・」

  「そうだよ。ね?ゆうしろっ」

  「そうですねぇ・・・ま、たまにはそれも良いですか」

私から離れると、ごそごそと懐から小銭を取り出す。

  「お賽銭・・・ですか。結局戻って来るんですがね・・・」

あはは。

悠志郎ってば、あんなこと言ってる。

ま、悠志郎らしいと言えば、悠志郎らしいか。

カリン・・・カタタン・・・。

ガラン・・・ガララン・・・。

パンパンッ。

そう思っている私を横に、悠志郎が目を閉じる。

  「・・・・・・」

そして・・・

  「ところで、美月は何をお願いしてたんですか?」

  「えっ?」

頭を上げた悠志郎が、私に言った言葉。

懐かしく響いて。

暖かく響いて。

それはまるで・・・。

だから私も、

  「悠志郎こそ、何をお願いしたの?」

悠志郎の方を向いて、震える声で。

そして・・・、

  「あははっ。内緒だよっ」

  「ふふふっ。内緒ですよっ」

そこには影が二つ。
夕日の中、並んで二つ。


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