力を抜けばいい   
 

リラクゼーション
 

 体育で水泳をやりました。まとめとして最後に25m泳がせたところ、子供達が口々に、「うまく泳げた」「すいすい泳げるようになっている」と言い出しました。なかには、「初めて25m行った」という声まで聞こえます。

 教育というのは、なかなかすぐに結果が出ないものです。そこを無理に結果を出そうとすると、教育は“受験戦争の戦場”になったりします。そこで、私たちは、何年後、何十年後(時には何世代後)にきっと花が咲くだろうと信じ、毎日、種を蒔き続けています。

 だから、たとえ今は「結果が出ていない」と言われても、恨まれてもかまわないと心を強くしなければならないのですが、なかなかそれも難しくて、時には、この授業のように、子供の歓声の中にいたくなります。

 さて、授業の方ですが、プールを始めてすぐ、ほとんどの子が、がむしゃらに力を入れて泳いでいることに気づきました。気持ちは出ているのですが、力が入り過ぎて、それがからまわりして、泳ぎのスピードになっていないのです。

 泳ぎをはじめとして、運動を上手にやる最大のポイントは、リラクゼーションです。上手に力を抜ける人が、一流になれるのです。つい先日、どこかのテレビ番組で、プレー中に舌を出しているスポーツ選手が多いという特集をやっていましたが、ディエゴマラドーナがドリブルする間ずっと舌を出していたり、カールルイスが最速で走るとき、顔の筋肉がゆるんで笑っているように見えるのは、有名な話です。

 必要なあるポイントでは、持っている力をすべてを一瞬で出し、その他はリラックスしているというのが、一流の条件です。

 泳ぎも同じで、まず大事なのは、リラックスして水に浮くことです。肩まで風呂に沈み、手の力を抜くと手は水に浮きますが、少し指先に力を入れるとすぐに沈んでしまいます。それを実験した後、伏し浮き、蹴伸びをやりました。

 これは、1年生の勉強です。算数と同じで、ほとんどの子が、伏し浮き、蹴伸びが、体になじんでいませんでした。1年生の時は水もこわい子がいて大変だったでしょうが、今は、なぜ必要なのかも理論的に理解できているので、上達は、非常に早いのです。

 次に、手だけのクロールをやりました。スピードは競わず、いかに少ないストロークで長い距離を泳げるかを競わせました。これは、手が体の下を通るあるポイントで一瞬の全力を出し、その他は、全身の力を上手に抜いておかなければ、遠くまでいけません。

 たったこれだけのことを、3時間やっただけです。私の計画としては、自分の泳ぎの上達を自覚するためには、あと4時間は必要なはずでしたが、うれしい誤算でした。この夏、このポイントを忘れず、もう少し練習してくれれば、彼らの泳ぎは見違えるようになるはずだという自信を、少し持つことができました。

 脳のリラクゼーションについては、前に少し書きましたが、上手なリラックスは、運動だけでなく、すべての上達の基本です。
 

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