伝記を読む   
 
 

本田宗一郎

 道徳で、本田宗一郎さんの話を取り上げました。教科書4ページの短い文ですので、よろしければ、一度お読みください。お子さんの朗読力を試しながら、見ていただいてもいいかもしれません。

 本田さんのどんなところが良いか、という質問で授業を進めました。

・勉強が必要だと感じたら、30歳になっても大学に行き、若い人に交じって 恥ずかしがらずに勉強を始めた。

・自分にできないことがすぐできる人、自分に分からないことがすぐに分かっ てしまう人を素直にすごいと思うことができる。

・人の作ったものではなく、何とか自分のものを作りたいと思っていた。

・失敗したら、必ず原因を突き止め、次の成功につなげようとした。

・人が喜ぶものを作りたいと願っていた。

 子供たちは、本田さんの良いところをたくさん見つけました。

 しかし、子供たちには、一つだけ気をつけてほしいと言っておきました。それは、「(湯たんぽをガソリンタンクがわりにすることを)パッと閃いた」「2人きりの会社を50人の会社にした。世界中に知れ渡る製品を作った」ということを本田さんの良いところにあげたことです。

 「パッと閃く」という天才性はすごいのですが、それをすごいと思うだけでは、自分の栄養になりません。実は、その前の文を良く読むと、ガソリンタンクをどうしようかと、ずっと考え続けたという記述があるのです。

 リンゴが落ちるのを見て引力の法則を発見した。地下鉄が駅に入ってくる瞬間に、新しい理論が閃いた。など、発見・発明の逸話はたくさんあります。もちろんその人たちは才能のある人たちですが、かといって、生まれてその発明・発見をするまで、ただボーッと生きてきたわけではありません。

 どの逸話もよく調べれば、考えに考え抜いたあげく、ふとリラックスした瞬間に、これまで考えていたすべてがつながったということが分かります。私たちがこれらの人から学ばなければいけないのは、考えに考え抜くという姿勢です。

 「会社が大きくなった。すごい製品を作った」というのは、結果です。結果だけ見てすごいと思うだけでは、これも自分の栄養になりません。なぜこうなったのかを考え、その経過を学ばなければなりません。「どうなったか」ではなく「どうしたか」「なぜそうしたか」をしっかりつかむことが大切です。

 天才、偉人の結果だけを見てあこがれても、自分の本質は変わりません。あこがれる人に出会ったら、その人の心や、やってきたことをしっかりした目で見て、そこをまねすることから始めて、成功を収めてほしいと思います。

 道徳の本にはありませんが、「自分が苦手とするマネージメントは、潔く藤沢さんに任せてしまった」「世襲制を取らなかった」「会長を退いた後は(本当は言いたいのに我慢して)後継者たちのやることに一切口を出さなかった」など、本田さんには見習うべきところが、まだいくつもあります。

 もう少し大きくなってから子供たちがまた本田さんに“出会えば”、さらにいくつか学ぶことができると思います。
 

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