火おこし器
A君が、火おこし器を作ってきました。休日に作った、お父さんとの合作だそうです。大変上手にできています。A君には、ある目的がありました。
ナウマン象を取っていた時代と今とでは、どちらが幸せだろうかという話し合いが、前回の社会で終了しました。昔の方が幸せ、今の方が幸せというそれぞれのチームが意見を出し合い、最後にそれぞれの代表者が最終弁論を行いました。その後、最後まで迷っていた3人が審判員となり、どちらの意見が優れていたかを判定しました。
それぞれのチームは、ほぼ同人数でした。意見の交換も、活発に行われました。しかし、最後の判定では、3対0で「昔の方が幸せチーム」が勝利を収めてしまったのです。
A君は、「今の方が幸せチーム」にいて、活発に意見を述べました。判定に不服があったのでしょう。彼は、判定を覆すべく、証拠の品を作ってもってきたのです。
火おこし器は、みんなの注目の的となりました。誰もがやらせてくれと手を伸ばしました。そして、火をひとつ手に入れることの困難さを実感したのです。その結果、3対0だった判定は、0対1に覆されてしまいました。(残りの二人は、判定できないと宣言しました。)
もし、A君が、判定を不服だと思った段階で、「それはおかしい。」と言っただけでは、「文句ばっかり言ういやな奴」というレッテルを貼られてしまったでしょう。しかし、証拠の品を一所懸命作ってみんなを説得したA君は、「すごい人」になったのです。
人生、あきらめないでしがみつくことが大切です。何とかしたいという熱意は、必ず何かを生み出します。
ただ、むやみやたらにしがみつくだけでは、ただのしつこい奴で終わってしまいます。能力を総動員した知恵と、丹念に積み重ねた努力でしがみついて、どの子も夢を現実にしていってほしいと思っています。