ぶつかる
「国語の本の漢字の振り仮名も、音符の階名の振り仮名もすべて禁止します。」
1学期に、こう言ったはずなのに、多くの子がこっそり振り仮名を教科書に振っていました。何とやる気の無い子たちだろうと、私はがっかりしました。
振り仮名をしてしまうと、自然に振り仮名の方に目が行ってしまい、本体の漢字や音符のドレミは、いつまで経ってもわからないままです。ですから、学習の際には、振り仮名は禁物です。
振り仮名をしないで絶対に覚えてやるぞ、という気力を持って学習に臨めば、それだけで、普段以上の集中力を発揮できます。それまで、振り仮名なしでは読めるようになるはずがないと思い込んでいた子も、予想以上の力を発揮して、振り仮名なしの文が読めるようになることも多いのです。
しかし、そうは言っても気力だけでは勉強も進みません。振り仮名をしないと、最初は読むのに手間がかかって、勉強そのものにやる気が出なくなったり、勉強が遅れてしまったりということも出てきます。
そうなったときは、それを乗り越える方法がいくつもあります。例えば、欄外に読み方を書いておく方法です。
国語の本には、下の方に広く空いているスペースがあります。そこに、まだ覚えていない漢字の読み方を書いておきます。そうすれば、本文を読むときに、まず、漢字本体にぶつかります。読めなければ、欄外の読み方の方に視線を移せばいいのです。
「この漢字はなんて読むんだったかな。」そう一瞬考えることで、脳の部屋のドアはノックされるのです。本文に振り仮名をしてあっては、ドアはノックされません。
また、たとえば「木かげ」を「きかげ」と読んでしまうように、うっかり読み間違えてしまいそうなものには、何か印をつけておいて、欄外に正しい読み方を書いておけば、力がつくでしょう。この場合も本文に振り仮名をしていては、力は伸びません。
言われたとおり自分なりにがんばってみた。でも、なかなか成果が表れない。もっといい方法も自分では考えられない。・・・こんなふうに勉強について真剣に考えた後にもらうアドバイスは、本当に身になります。
いくらイオン価などを計算して体への浸透率を上げた飲み物でも、“乾いていない体”に与えては、その効果は得られません。砂漠の中を歩き続けた後の一杯の普通の水にはかなわないのです。
「先生の言ったとおりに振り仮名をしないでがんばったけど、ちっとも覚えられないよ。それどころか前より勉強に時間がかかってやる気がだんだんなくなってしまった。本当に先生の言ったやり方でいいの?もっといい方法があったら教えてほしい。」
まず、いいと言われたことをやってみる。やってみてだめなら、自分で工夫したり、相談したりする。進歩するためには、こうした“ぶつかっていく”姿勢が絶対に必要です。こそこそ逃げる子に、進歩の可能性はありません。