お化粧   
 

メイクアップ

 2学期になってから、掃除の時間、「もっとしっかりやりなさい。」と他のクラスの先生から言われている場面が何度もありました。彼らの話を聞くと、特にサボっていた訳でもなく、やるべきこともちゃんとやってありました。

 おかしいなと思い、何日か、彼らの様子を見ていると、その原因がわかりました。動き方がへたで、しっかりやっているのに、やる気のないように見えるのです。そこで、どんなふうに動けば自分のやる気が伝わるかを、箒の使い方、ぞうきんの使い方などについて、みんなで研究しました。

 逃亡犯人がした整形手術は、元の顔を変えて人をだます技術です。でも、お母さんが毎日しているメイクは、自分の持っているものを最も魅力的に見せるための技術です。

 やる気がないのにやる気があるように見せるのは、逃亡犯の整形手術と同じで、してはいけません。しかし、やる気があることを見せるために工夫するのは、メイクと同じでどんどんするべきだと思います。

 行動をメイクアップする場面は、掃除だけに限りません。あいさつ、返事などはどうでしょう。あいさつや返事をしっかりしなかったために誤解を受けている子はいないでしょうか。

 立ったりすわったりしている姿勢はどうでしょう。やる気に満ちているのに、変な姿勢が癖になってしまっているために、やる気がないと誤解されることはないでしょうか。

 顔のメイクに基本があるように、行動のメイクアップにも、基本があると思われます。まず、元気のいい声で積極的に言葉を発すること。その場に合った言葉を選ぶこと。効率の良い正しい姿勢や動き方をきちんと学んでおくこと。

 少しくらいつらいことがあっても、毎日がんばって、元気のいい姿をみんなの前で見せている子は、本当につらいことがあったとき、周りの人が心から心配してくれるでしょう。いつもつまらなそうな顔で、声も小さく、やる気のあるのかないのかわからないような様子の子は、どれが本当につらいときの顔なのか、周りの人にはわかりません。
 

きっかけ

               
 もうすぐ修学旅行ですね。私は楽しみです。そのわけは3つあります。1つ目は、修学旅行先で知らないことを調べられること。2つ目は、いつもよりみんなと仲良くすごせそうなこと。3つ目は、旅行先でおけしょうをしようと思っていることです。

 あいさつなど、明るく元気よくすると決めています。修学旅行で、少し自分を変えてみたいと思い、自分でこのめあてを作りました。修学旅行では、たくさん学びたいです。
               

 Aさんの言うお化粧とは、もちろん、前に書いたメイクアップのことです。

 大人の歯が生え始めるころまでは、人間はただひたすら生きているだけで、日々変身していきます。6歳を過ぎるとそうもいきませんが、それでも、何かに興味を持って夢中になっていれば、自分でも気づかぬうちに変身していくことが可能です。しかし、その時期も過ぎ、第2次性徴を越えるころになると、変身するのは至難の業となってきます。

 しかし、皮肉なことに、自分自身を知り始め、別の自分に生まれ変わりたいと思うようになるのもこの時期なのです。ほとんどの人が、この時期に変身願望を持ちますが、この願望を成就させるためには莫大な気力が必要です。

 莫大な気力を発生させる源には、夢、あこがれ、恋などいろいろとありますが、ほんの小さなことでも何かをきっかけとして上手に利用すれば、変身へのエネルギーを得ることができる場合があります。

 日頃、明るいあいさつのできる人間になりたいなあと思っていても、日常の生活の中ではなかなか実現しないものです。明日の朝からがんばるぞと思って床に就いても、翌日、いつもと同じシチュエーションの中に自分が置かれると、変わろうという力も萎えてしまうことが多いでしょう。

 それでも、気を奮い起こして、ある日突然元気にあいさつをし始めたら、逆に、何か悲しいことでもあったのかと慰められた、などということも起こったりします。

 Aさんは、日頃こうなりたいと思っていたことを、修学旅行といういつもと違う状況をきっかけにして頑張ろうと考えました。とってもいいアイデアです。ぜひ、この2日間を上手に使って、“お化粧”してみてください。旅行から帰ってくるころには、そのお化粧は、素顔に染み込んでいるかもしれません。
 

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