Q8 授業中、発表したいのに発表できない。
A8 発表ができないと悩んでいたAさんは、こんな日記を書いていました。
発表したら、すっごくどきどきした。
発表を一日一回(できるなら一時間、一教科に一回ぐらい)はしたい、と自分は思っている。
でも、どうしても発表の内容をまとめられない。
なんで、みんな、そんなにいっぱい発表できるんだろう。
手をあげようと思っても、(だいじょうぶかな。合っているかな。みんな、何か言わないかな。)とかいろいろ考える。
自信がない。
自信がないとなんにもできない。
自信を持ってがんばってみよう!・・・けど・・・
中には、そうでない人もいますが、人の前で自分の考えを述べるというのは、なかなか難しいもので、自信を持って話せるようになるためには、それなりの時間と条件が必要です。
この日記のAさん以外にも、こんなふうに悩んでいる人はたくさんいるでしょう。
・自分の意見に間違いがないと言い切れるほど完璧に準備がしてある。
・聞いている人すべてが、家族のように心が通じていて、自分の発表がどんな事態に陥っても、反対意見がでない、責められたりしない。
こんな好条件がそろっていれば、誰だって勇んで発表できるでしょうが、こんなに世の中は、うまくできていません。
(この条件がそろっていると良いように思えますが、実はそうではありません。これについては、後程お話しします。)
親としては、「今日、たくさん発表したよ。」と言われると、「まじめにやっているのだな。」と安心します。
授業に集中して、一所懸命考えていなければ発表はできないのですから、確かに、たくさん発表する子は、授業中まじめにやっているといえます。
しかし、発表の回数が少ないとか、今日一度も発表しなかったということが、必ずしも、「まじめに授業を受けていなかった」ということにはなりません。
一度も発表しない授業でも、集中して真剣にいることも多いのです。
「今日は発表した?」と聞くことは、お子さんへの励ましになります。
でも、「今日はしなかった」という答えに対して、「失望」の態度を感じさせてしまうと、逆効果になるでしょう。
こうして書いてくると、授業中の発表はしなくていいと誤解されそうですが、授業中に発表することは、とても大切です。
発表しようと頑張ると、こんなに良いことがあります。
◇人の言葉に集中できるようになる。
1年生の頃は、自分の言いたいことさえあれば、発言は可能です。
しかし、高学年になるとそうはいきません。
授業の流れに全く関係のない発言は“まずい”ということがわかってくるからです。
ですから、授業中に発表したいと思っている子は、友達や先生の言葉に注意深く耳を傾けます。
そうでない子との集中力の差は、日に日に開いていきます。
◇話の組み立てが上手になる。
自分の言ったことが相手に伝わらなければ発表したかいがありません。
ですから、どんなふうに話せば、みんながわかってくれるか一所懸命考えます。
考えれば考えるほど話をまとめる力はついてきます。
◇声の大きさが身につく
これは、意外かもしれませんが、声の大きさを調整するということは小学生にとって、なかなか難しいものです。
隣に座っている友達と話すときの声、教室で発表する時の声、運動場で遊ぶ時の声。
どれも適度な大きさがあり、それを使い分けなければいけません。
授業中に発表をしない子の中には、この声の大きさの調節がなかなか身につかない子がいるようです。
大事なときに、相手に伝わるような大きさの声で話せなかったり、逆に、休み時間などに素っ頓狂な大きな声で騒いでしまう子が時々いますが、授業中にしっかり発言する子の中には、こういう子はいません。
◇“裸”になれる
発言すると、自分がどんなことを考えているか、どの程度のことを考えているか、が全部聞いている人に分かってしまいます。
自分の力がどれくらいかが、みんなにわかってもらえるので、何も隠すものはなくなり、堂々としていられます。
自分は算数が苦手だけど、こんなにできないこと、みんなにしられたくないなあ、みんなに知られたらどうしよう、などと、びくびくしながら生きていると、最後まで自分の力を伸ばせずに終わってしまいます。
授業中に発表することには、もっともっとたくさんのメリットがあるかもしれません。
発表しない子は、発表しない子と、どんどん力の差が出てきます。
さて、では、どうすれば、発表できるようになるのでしょう。
まず、発言に自信を持てるような準備がしてあると、心強いですね。
この教科で発表したいと決めたら、それについて、予習でも復習でもとにかくやりまくっておくと自信が持てるようになってきます。
4年生までの予習は、毒になることも多いのですが、5年生あたりから予習の癖をつけるのは、よい勉強法です。
次に、友達をたくさん作っておくとさらに心強くなります。
休み時間に、なるべく多くの人に話しかけてみましょう。
一度も親しく話したことのない人ばかりの前で意見を述べるのと、一度でも話したり、笑ったりした人たちの前で意見を述べるのでは、安心感に格段の違いが出てきます。
大勢の前で話すのは苦手だけれど、1対1なら何とかなりそう、という人は、ここから始めましょう。
Aさんは、こんな悩みも持っていました。
委員会で、音楽集会の司会をやることになりました。
でも、はずかしくて大きな声が出ません。
大きな声を出す方法を教えてください。
発表に関する最大のポイントがこれ、“はずかしい”という気持ちです。
これは、どうしたらいいでしょうか。
この日記のAさんには、こんなふうにアドバイスしました。
失敗して恥をかいたらどうしよう…君が心配しているのは、自分のことばかりです。
君が本当に心配しなければいけないことは、他にあります。
それは、自分の言葉を聴いている1年生が、集会のことをよくわかって楽しんでくれるかな、ということです。
自分がしっかりした声を出して、司会をやりとげれば、たくさんの子が、この集会を楽しめるんだよ。
もし、そういう気持ちになれなかったら、誰か一人、知っている1年生を思い浮かべてその子に届くように、とそればかり考えて話してごらん。
君の司会で、その子が集会を楽しんでくれるよ。
Aさんが、集会の当日、どんなことを考えながら司会をしたかはわかりません。
でも、Aさんは、立派に、にこにこした顔で、司会をやり遂げることができました。
誰かのためにがんばろうという気持ちは、自分の持っているパワーを最大限に引き出します。
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