Q15  漢字書き取りの宿題に疑問を感じています。

読者の方からの御相談************************

こうじ先生

はじめまして。

小4の息子を持つ、Aと申します。

今、担任の先生から毎日のように出される漢字の書き取り宿題について疑問に思うところがあり、ぜひ先生にご相談したく、メールを差し上げることにいたしました。

息子の担任の先生は、新しく習う漢字を、ノートの一番上に見出しとして1文字、その下に10文字連続で書くように、と言われます。

その後ろに熟語をいくつか書く、というのが宿題のやり方のきまりです。
3年生のときから、ずっとそのやり方です。

私は常々そのやり方に疑問を持っておりました。

11文字連続して書くことに、記憶を定着させる有効性はないのでは?

かえって、書き方が雑になってしまうのでは?

同じ量を書くなら、3日に分けたほうがいいのでは?

それよりも、熟語や例文として書いたほうが有効なのでは?と。

そして、そんな疑問を、昨年秋の面談のときに正直にお話しました。

先生のお答えはこうでした。

「お母さんのお考えもわかりますが、今のところは、ノートをきれいに使う、という事を定着させたいので、1行分は同じ字を書くやり方を続けたいと思います」ということでした。

あまり納得のいくご返答ではなかったのですが、「今のところは」とおっしゃるからには、いずれ変更をお考え下さるのだろう、と引き下がりました。

しかし4年生になっても一向に変更はなされません。

そして悩み、「漢字書き取り宿題」というキーワードでネット検索をしたところ、こうじ先生のメルマガとホームページに出会うことができました。

先生も、10文字も連続して同じ文字を書くのは時間の無駄である、というご意見なのを読み、大変心強く感じました。

主人に相談しますと、「君の考えはわかるけれど、そこまで細かく担任の先生に注文することは無理だと思う」と言います。

大人として、他人と摩擦を起こさずやっていくには、今のままのやり方を受け入れておくのが無難なのはわかります。

しかし、我慢するのが自分であるならまだしも、大切な時間が無意味な宿題につぶされることを、我慢しなければならないのは「子供本人」です。

私は、同じ時間勉強するのなら、効率的な方がいいと思います。

まして、子供時代の時間は貴重です。

わずかなようでも、毎日積み重なれば大変な時間になります。

ほかの、もっと有効な学びに使えたかもしれない大切な時間が、担任の先生に強制される無意味な宿題に費やされるのは、子供にとってとても不幸なことです。不憫です。

この状況を変えるには、どうしても親の行動が必要と思います。

どうか先生、こんな場合の、効果的な担任の先生へのアプローチの仕方について、アドバイスして下さいませ。

お忙しい先生の貴重なお時間を、見ず知らずの私のために使っていただくのは、大変恐縮に思いますが、どうかお願いいたします。

ほかに相談できる方もおらず、途方にくれておりました。

よろしくお願い申し上げます。

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A15   

私からの御返事******************************

こんにちは。

「よい子」をていねいに読んでくださりありがとうございます。

ご相談の件について、僕の考えを書きます。

教育の理念や方法はいまだにどれが正しいのか、人類はわからずに進んでいます。

教育の先進国といわれる国でさえ試行錯誤を繰り返している途中です。

ですから、担任の先生のやっている方法、お母さんが正しいと思う方法、僕の勧める方法のどれが正しいのかわからないと、僕は思います。

30年後、お子さんが社会で最も活躍し、自分の幸せを自分の手でつかめる年齢になった時にどれが正しかったのかがやっとわかります。

ただ、それも、お子さんにとっての正解であり、他の人の人生にとっては正解ではないかもしれません。

と、めんどくさい話はここまでにします。

お子さんはラッキーです。

書き取りの方法までしっかり考えてくれる担任の先生の学級にいるからです。

僕は、生きていくうえでの基本的な考え方として、目の前に起こることはすべて自分が幸せになるための必然の出来事だと考えています。

お子さんが、その書き取りの方法を考えてくれる担任と出会ったことは、きっとお子さんにとって必要なことだったのでしょう。

お母さんにとっても、それがきっかけでお子さんの勉強方法を考える時間が生まれたし、僕も、こうしてまた一人新しい人と出会えました。

お子さんは、担任の先生の考えた方法で宿題をすればよいと思います。

ただ、少し工夫を加えましょう。

私なら、11回の練習にそれぞれ目的を持たせます。

最初の2回は書き順を覚えるために書きます。

次の2回は部首を覚えるために書きます。

次の2回は音読みを唱えながら書きます。

次の2回は訓読みを唱えながら書きます。

次の3回は各線の長さと角度を覚えるために書きます。

これだけでも、もう、11回書き終えてしまいました。

まだしなければならないことが少しあるので、11回では足りないかもしれませんね(^o^)

どんな方法がいちばん漢字を覚え易いか、という方法はまだ科学的に解明されていません。

科学的に解明されても、個人差があって万人にあてはまることが少ないということもたくさんあります。

お子さんに覚えてほしいのは、お子さんのために一所懸命考えてくれる人(先生)に出会えたことは幸運なので、その幸運に感謝すること、足りないことを見つけたら、自分で工夫すればそれがうめられるということを知ることです。

11回の書き取りにどんな工夫を加えるか、お父さん、お母さんがいっしょに考えてあげてください。

いい方法が見つかったら、僕にも教えてくださいね。

多分、同様に悩んでいるお父さん、お母さんがいると思います。

Aさんのご同意をいただければ、この件を「よい子」の記事にしたいと思います。

了承いただけるようでしたら、またお便りをください。

いつでも気軽にお便りをいただけるのを待っています。

これからもよろしくお願いします。

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読者の方からの御返事************************

増田浩二先生

早速お返事を頂き、ありがとうございました。

お忙しい中で、私のために貴重な時間をお使いいただきましたこと、大変感謝しております。

浩二先生からのお返事を読ませていただき感じたことを、率直にお伝えしたいと思います。

> ですから、担任の先生のやっている方法、お母さんが正しいと思う方法、僕の勧める方法のどれが正しいのか わからないと、僕は思います。

確かに、そう思います。

> 30年後、お子さんが社会で最も活躍し、自分の幸せを自分の手でつかめる年齢になった時に どれが正しかったのかがやっとわかります。 ただ、それも、おこさんにとっての正解であり、他の人の人生にとっては正解ではないかもしれません。

まったく、そうだと思います。

> お子さんはラッキーです。 書き取りの方法までしっかり考えてくれる担任の先生の学級にいるからです。

そうですね。

そういう考え方もあるのでしょうけれど、私にはそうは思えません。

誰かにとって正しい方法でも、ほかの誰かにとっては正しい方法ではないかもしれない、と浩二先生は書かれました。

だったら、やり方までも細かく一律に強制する担任の先生のやり方は、子供たちにとってマイナスではないでしょうか?

漢字を覚えるのにかかる時間や回数は、子供によって違うと思います。

お忙しい先生方に子供個々人に適した処方箋をいただくわけにはいかない事は承知しております。

ですからせめて、書き取り練習の方法くらいは、子供のことを身近で見て知っている、保護者に委ねていただいた方がありがたいのです。

「○○君には、この方法が適当ですよ」と一人ひとりに合った方法を、根拠とともに指示してくださるならば受け入れやすいと思います。

子供の実力の推移を見ながら、適宜変更してくださるなら、言うことなしです。

(もちろん、今の小学校の現状でそんな事が無理なのは、承知しておりますよ。)

しかし、クラス中の子供に同じ条件を課すのは、言葉は悪いですが「手抜き」と言えなくもないと思います。

特別支援教育の必要なども言われている昨今、「すべて、一律」というのが子供達のためにならないことを、先生方にも気づいて頂きたいと思います。

> お子さんは、担任の先生の考えた方法で宿題をすればよいと思います。 11回の書き取りにどんな工夫を加えるか、 お父さん、お母さんがいっしょに考えてあげてください。

11回の書き取りにうんざりして、ますます字が汚くなっていく子供の様子を毎日見ています。

漢字以外にも、学ぶべきことはたくさんあります。

正直申し上げて、いい工夫は思いつきそうもありません。

今、浩二先生へお伝えするためにこの文章を書きながら、自分が抱いている不満の、本当の原因に気づきました。

「11回の書き取り」は表面的なことであり、本当に不満に思っているものの正体は、「どの子にも一律」を押し付けてくる、

公教育そのものかもしれません。(大風呂敷を広げすぎかもしれませんが・・・)

せっかく浩二先生の下さったお返事に、反論ばかり並べ立ててしまい、申し訳ありません。

けれど、取り繕った内容をお送りするよりも、「こんな先生方の対応には、こんなふうに感じ、考える、(やっかいな!)保護者もいる」という事を知っていただいたほうが、浩二先生の今後のお仕事の上には役立てていただけるかもしれない、と思いましたので、あえて率直な気持ちをお知らせすることに致しました。

ご不快に思われる箇所も多かったかと思います。

お許しください。

このような文章を最後までお読みいただいて、ありがとうございました。

> 増田さんのご同意をいただければ、この件を「よい子」の記事にしたいと思います。
> 了承いただけるようでしたら、またお便りをください。

もちろん、かまいません。

> いつでも気軽にお便りをいただけるのを待っています。 これからもよろしくお願いします。

ありがとうございます。

こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

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私からのお返事******************************

こんにちは。

ていねいなお返事ありがとうございます。

「一律に押し付ける問題」は確かに難しい問題ですね。

親は、子どもの成長の「縦」にくわしく、教員は子どもの成長の「横」にくわしいのでどちらの目も一度に持って子どもを見られる人がいると理想的ですが、現実にはなかなか難しいことです。

※縦…年齢的成長
 横…同年代の子の成長の度合い

お子さんの様子がわからない僕が言えることは少ないですが、どうか、お子さんが夢を実現する年齢になった時に最高の力が出るように育てるという視点をお父さん、お母さん、そして先生も持っていてほしいと思います。

ちなみに、今週から僕はクラスの子に宿題を出します。

条件は、テストで100点を取れるまで毎日1ページです。

その他の細かいところは、本人に任せてあります。

ただし、僕が納得できるていねいな字でなければ、突っ返します。

うまさではなくて、ていねいさ、です。

漢字のことや「一律」について、「よい子」でも書いていきたいと思います。

これからも、よろしくお願いします。

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