Q18  勉強は大丈夫だが、係活動などの行動面が今ひとつだと面接で言われました。  

A18  タイタニックという映画は、ご覧になりましたか。

    映画はご覧になっていなくても、タイタニック号についてはご存知だと思います。

    タイタニックのことを考えるといつも思うことがあります。

    それは、「客と乗組員」ということです。

    タイタニックという船には、客と乗組員という2種類の人間が乗っています。(映画の場合は、乗組員がさらに2つにわかれるのですが、ここでは、それには、言及しないことにします。)

    映画では、氷山にぶつかった時に、客と乗組員は、概ね次のような反応を示します。

    客の方は、沈まないと言った約束はどうなったと文句を言い、我先にと船を出ようとします。

    乗組員は、沈没の回避をまず先に考え、一人でも多くを救うことで、タイタニックの乗組員であるという誇りを守ろうとします。

    客は、文句を言う分だけの費用を払っているので、それに見合わない事態が起きたことに対してクレームをつけるのは当然の権利であるといえます。

    また、この船を捨てていくことも、当然のことです。

    私がいつも気になるのは、自分が客なのか、乗組員なのかを正しく自覚していない人間がいるのではないか、ということです。

    「家庭」という船に乗っている「家族」という人達は、客でしょうか、乗組員でしょうか。

    お父さんとお母さんは、家庭という船の「建造」から携わっている、乗組員以上の存在です。

    二人で作った船にやってきた子供はどうでしょう。

    生まれたばかりの子供は、お父さんとお母さんの至福の喜びの中で、大事なゲストとして迎えられます。

    しかし、この歓迎されたお客さんは、成長と共に乗組員になっていかなければいけません。

    家族に誇りを持ち、自分の役目に責任の持てる立派な乗組員になるのです。

    では、彼らは、いつから客から乗組員に変わっていくのでしょう。  

    子供が成長して行く過程は、生まれた後を4つの時期に区切るとわかりやすい、ということをこれまでに書きました。

    生まれてから乳歯が抜け始めるまで、第2次性徴が始まるまで、第2次性徴が安定するまで、身長の伸びが止まるまで、の4期です。

    人それぞれ成長の速度は違いますが、6歳、10歳、14歳、18歳が、およその節目になります。

    大人になって(18歳をすぎて)も、家族、社会の一員としての意識が全くないのは、もちろん困ります。

    それまでに、家庭においては、6歳を過ぎたら、自分が「乗組員」の一員であることを知り、10歳を過ぎたら、乗組員の一員としての役割を果たし、14歳を過ぎたら、舵は握れないにしてもブリッジに立ち、親が見ている進路を一緒に見るというように、家族のメンバーの一人としての意識や経験が、徐々に確立していなくてはいけないと思います。

    そう考えると、小学生の時期が、「ゲスト」から「スタッフ」へ意識や行動を変えていく時期だといえます。

    学校では、成長に合わせ、子供たちに任せる部分を増やし、学校や社会の乗組員としての意識や経験を高めていこうとしています。

    1年生から学級の係活動を始めます。

    最初は、学級の中だけの仕事ですが、3、4年になると児童会の話し合いにも参加したりして、自分たちの行動が学校全体にかかわっているということがしだいに分かってきます。

    5年生になると、委員会活動が始まり、直接学校全体の動きにかかわるような仕事が任されます。

    小さな頃は、先生が決めてくれたひとつの仕事をやりこなすことで、達成感を味わうことから係活動が始まります。

    しかし、高学年になると、係活動の内容も、自由に決定できる部分が多くなります。

    自由が多いということは、任される部分、責任を持つ部分が多くなるということです。

    「任される」ことで、自由には同じ重さの誇りと責任が伴っているということを、知っていきます。

    「人は誰も生まれながらにして自由である」ということと、誰もが家族の、社会の、人類の、そして、この星のメンバーの一人であるということと切り離して教えてしまうと、大変なことになってしまいます。  

    成長の早さは人それぞれですから、教室には、乗組員の意識をはっきり持っている子から、そうでない子まで、混在しています。

    給食の時間には、率先して全体の給食の仕事をしようとする子や、当番がやり残していることを見つけ黙ってそれに取り掛かる子、誰も気づかない床に落ちた残飯を毎日始末してくれる子がいますが、自分のお盆を持って順番を待つだけの子や、片付けの時に、食器を乱暴に扱い残った食べ物を飛び散らせたり、牛乳の空きパックをケースの中に放り投げていく子もいます。

    朝の会、帰りの会では、時計を見て、さあ、始めようと働きかける子がいる傍ら、、会が始まっているのを知ってか知らずか、自分勝手なことをしている子もいます。

    休み時間には、クラスみんなで遊ぶ時間を計画し実行にうつす子や、それに協力しようとする子もいるし、「今日の遊びはつまらない。」と文句を言うだけの子もいます。

    この違いをよく「性格」という言葉で片付けてしまうことがありますが、それは違います。

    上っている成長の坂道の「今の地点」の高さが違うのです。

    たまたま同じ年齢としてくくられて〇年生と言われているだけなので、このクラスのメンバー全員が同じ高さの成長の坂道を登っているとはいえないので、人それぞれなのは、当然です。

    しかし、行動面が今一つだと言われたということは、他の子に比べて、お子さんの坂道の位置が低い恐れがあります。

    お子さんや他の子の行動について、先生から、もう少し詳しく話を聞いて、「成長の坂道の位置」という視点で、お子さんの行動について考えてみてください。

    お家では、お子さんの成長に合わせて、家事を任される部分は増えているでしょうか。

    夏休みなどの長期休業は、それについてチェックしたり、任せる部分について検討するよい機会だと思います。  

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