Q40  息子のことで、一度、担任の先生に相談したのですが、解決に至りませんでした。

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読者の方からの御相談************************

いつも読み終わると、子育てへの前向きパワーをいただいています。

子どもの学校生活での悩み相談の乗り方、声のかけ方について御相談です。

息子は一人っ子で、まじめでガンバリ屋です。

友達とも仲良くしているようですが、やんちゃ系の男子に標的にされやすい面があるようです。

兄弟げんかなどの経験のなさから、立ち回りが下手なのだろうと推測しています。

息子の学校は、少々荒れている公立校です。昨年度(4年生の時)は、学級が崩壊してしまい子どもが家で情緒が安定しなかったり学校でのトラブルを学校で解決できないために親同士で解決したり、大変でした。

今年こそはと思った5年生でしたが、12月ごろずっと嫌がらせを受けていたことが判明。

これまでも、嫌なことがあった時は、家でも話していましたがそんなこともあるよ、と励ましていれば、息子もすぐに気持ちを切り替えていたのでなんとか大丈夫かな…と思っていたのですが。

12月には同じ相手から執拗に続くこと、先生に話しても話をきちんと聞いてくれないことなどがつもりにつもって爆発してしまいました。

先生に伝えようかと私が言っても、「ちくり」呼ばわりされるからやめてくれと言われましたが、私の判断で先生に子どもに内緒で相談しました。

これで安心かと思ったのですが、先生は相手の子と息子とに一緒に話を聞き、「あなたにもされる原因がある」といったり「周りの人に相談できんそんな人が自殺するんよ」といったり、びっくりするような対応でした。

その後、児童会運営員会を選挙で決めるイベントがあり、息子はやってみたいと立候補しました。

3クラスからそれぞれ3人ずつ計9名選出し、決選投票して選ぶというもので息子はクラス代表に選抜されたものの9名中3人の落選の中に入ってしまいました。

先生からは「徒競走で走ったらびりの人がいるから1位の人がいる。それはしかたがないこと」と声をかけられたそうです。

親としてはその想定内の負の出来事に対する対応にも、選挙で決めるというのにも不満ですが…。

落ち込む息子を励ますのに苦労しました…。

その後、いつも嫌がらせをされている子に息子が言葉でやり返したことを先生に取り上げられ「児童会に立候補してみんなが楽しい学校にするとか言ってたのに、あんたがいじめの種をまいている。がっかりした。」とひどく叱られたそうです。

自分がしたことがいけなかったと反省していますが、そこまで言われなくても…と息子は思ったようです。

親としても児童会の落選から少しずつ立ち直っている息子にまた、傷口を広げるようなこと言わなくてもと思います。

児童会のこともそうですが、先生との関係で悩む息子。

やんちゃ系の男子に標的にされやすい息子。

どのように家庭で対応してやればよいでしょうか。

今は、話を聞いて共感することに努めています。

人生これからも辛いことはたくさんあるから強くたくましく現実を受け入れて生きていくしかないと思っています。

長文になり申し訳ありません。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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私からのお返事******************************

 お便り、ありがとうございます。

毎週ていねいに読んでいただいて、うれしいです。

 息子さんも、お父さん、お母さんも大変ですね。

 でも、息子さんは、共感的に話を聴いてくれるお父さん、お母さんがいて、とても幸せだと思います。

本人が気づくのは、息子さんにお子さんができた時でしょうから、まだ、うんと先ですが。

 どの学校、どの学級でも、同様のことは必ず起こりますが、1日で解決できることは、残念ながらありません。

ただ、お父さん、お母さんの考え方や行動力で解決の道を早めることはできます。

 基本的な考え方は、「真実は多面体でできている」ということです。

 一つの真実も、多面体でできているので、見る方向、見る人間によって、違う形に見えます。

それぞれが、嘘、隠しなく、それについて話しても、まったく違うもののように思えることは多々あります。

 息子さんは、学校での出来事、先生から言われたことを、正直にお父さん、お母さんに話していると思います。

しかし、それでも、それは、映画で言えば、一人の出演者の視点から見えたものであり、全体を知っている監督やプロデューサーの目からみたものとは違う場合が多いのです。

ですから、お父さん、お母さんが息子さんから聞く学校の風景も、息子さんの視点から見たものです。

 そこで、お父さん、お母さんの出番です。

 昨年、学級の問題を親が話し合って解決したということですが、息子さんにしつこくしてくるやんちゃな同級生のお父さん、お母さんとは親しいでしょうか。

 親しさを段階的に表すと、こんな感じになります。

 「顔もよく知らない」

「誰かと話しているのは見たことがある」

「会えば挨拶程度はする」

「会えばおしゃべりをする」

「地域の活動やPTAの活動で、いっしょに役員をやったりしてきた」

「友達」

 「顔もよく知らない」「誰かと話しているのは見たことがある」では、その子はどんな子なのだろう、親はどういう躾をしているのだろうと、お父さん、お母さんの心の中の疑心暗鬼は渦を巻くように大きくなっていきます。

もし、お父さん、お母さんの心がそんな不安な状態なら、いくら共感的に聴いていても、それは、逆に、息子さんの心の中での相手の子の「悪さ」を大きくする助長をするだけです。

「会えばおしゃべりをする」「地域の活動やPTAの活動で、いっしょに役員をやったりしてきた」「友達」のように、親同士が親しい間柄だと、息子さんの話を、息子さんの視点と、お父さん、お母さんが、他の情報から知っている視点の2つの視点を踏まえて聴くことができるので、息子さんの話を聴いている時も、お父さん、お母さんの心には余裕が生まれます。

共感的に聴くには、その余裕から自然に生まれる表情が大事です。

 共感的というと、話している人と同じレベルで同じ気持ちになること、ととらえがちですが、それは、少し違います。

 相談したくなる相手について考えると、よくわかります。

何か悩みがある時、それを経験しているかどうかわからない人よりも、それを確かに経験している人や、それについて深い洞察力をもっている専門家、さらに、何でもご存じの「神様」に告白したくなるのが人の常です。

「お父さん、お母さんは、〇〇君のお父さん、お母さんと親しいから、〇〇君のことを話しても、よくわかってくれる」…これが共感してもらったという安心感です。

 共感的に聞くためには、相談者よりたくさんの視点を持って、余裕のある表情で聴くことが、とても重要です。

 さて、先生には一度相談されたようですが、参観日や学校公開日、PTA活動などで、先生とは気軽におしゃべりしていますか。

もし、そうなら、とても安心です。

きっと、息子さんから先生の話を聴く時も、「この先生は、普段こういう話しっぷりで、多分、こんな場合は、こんな風に話すのだろう」と、お父さん、お母さんに余裕の表情が出るからです。

 1度の相談で不安が残った場合は、遠慮せず、また、話を聞いたり、相談してみるとよいと思います。

息子さんは、それを嫌がるようですので、息子さんにはわからない方法で、先生と会ってください。

 子どもが学校にいない時間に、学校に電話し、息子さんにわからないように先生と話したいとお願いしてください。

また、家でしっかり話をするために様子を聞きたいので、面会したことは子どもに黙っていてくださいとお願いしてください。

応じてくれるはずです。

 蛇足ですが、時々、担任と直接、よく話もせずに、校長や教育委員会に訴える人がいるようですが、これは、逆効果です。

担任と直接話していると、その話も校長等に報告されるので、校長の方も事情を分かった上で、よく吟味した対応をしてくれますが、いきなりの鉄砲電話では、校長や教育委員会は、まず、先生の立場に立って、ものを考えます。

 もし、子どもに隠れて話したくない、と先生がおっしゃったり、息子さんに漏らしたりするようなことがあれば、その時は、直接、学年主任や校長に話を持って行ってもいいと思います。

 さて、先生と会う時に気を付けたいのは、「○○君や先生という悪者を退治するために行くのではない」ということです。

時々、そんな雰囲気で来る方もいらっしゃいますが、大抵は、お子さんの視点からのみの情報を元に、疑心暗鬼を膨らめて来る方ばかりです。

そんな方々は、こちらの話をよく聞いてもらうと、終わりには、「そういうことだったんですね。よくわかりました。」と言ってお帰りになります。

 先日、担任しているA君のお母さんから、放課後、学校に「息子には内緒で相談したいことがあるので会ってほしい」という電話がありました。

その日は、珍しく会議もなかったので、すぐに来校してもらい、ゆっくり話ができました。

A君のお母さんは、会えば親しく声をかけてくれる方で、多分、その日はこちらに時間がありそうだと予想して電話をくれたと思います。

 A君のお母さんの御相談は「最近、〇〇君にいじめられているようで、家でも落ち着かない」という内容でしたが、A君のお母さんは、そうは切り出しませんでした。

「最近、〇〇君と仲が悪いようですが、うちの息子は、口汚く〇〇君を罵ったりしていませんか」

こんなふうにA君のお母さんは、話を切り出しました。

A君のお母さんは頭のいい人だなあと感動しながら、私は学校での様子を説明しました。

 A君のお母さんは、「では、家で、こんなふうに言葉かけをすればいいんですね。安心しました」とおっしゃって帰っていきました。

 いきなり、〇〇君や先生を責めたとしても先生は冷静に対応してくれるでしょうが、A君のお母さんのように切り出されたら、どの先生も、冷静以上に、親身になって相談にのってあげたいと思ってくれるのではないかと思います。

 「速効よい子」なのに、速効性のないお答えですが、何かの参考になれば、何よりです。

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