Q54  3年生の息子が、ゆびしゃぶりをやめません。いじめられないでしょうか。

読者の方からのお便り********************

小3の息子、未だに就寝中の指しゃぶりが治りません。

永久歯の前歯が前に出てきており、歯科衛生士さんから、矯正を検討しては?と言われましたが、いくら矯正しても、指しゃぶりをやめないと意味がありません。

修学旅行や、大人になってからパートナーと就寝時に、からかわれたりしないか心配ですが、どうすれば治るのかわかりません。

小児専門の心療内科に行くのがいいでしょうか?

お知恵を貸して頂けると、大変嬉しいです。

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A54   指しゃぶりをする子は、案外、たくさんいます。

でも、6年生になって、指しゃぶりを見られたら、確実に、からかわれます。

 からかいがいじめにつながることが心配だと思いますが、大丈夫です。

からかわれることと、嫌われる、いじめられることとは、全く違う話だからです。

からかわれることによって、より仲良くなることも多いのです。

いじめにつながるかどうかは、からかいがあるかどうか、ではなく、からかいをどんなふうに受け止めるか、とか、自分が相手にとって、どういう人間なのか、ということで決まるからです。

 そこで、3つ、ご提案します。

1 指しゃぶりはからかわれる、と教える

 指しゃぶりはからかわれると、はっきり教えてください。

ただ、深刻な顔をして伝えてはいけません。

指しゃぶりは、罪でも悪でもないのです。

指しゃぶりはおかしいと家族が笑ってやると、指しゃぶりに対する「暗さ」がなくなります。

 指しゃぶりはからかわれることだけど、特に深刻なことではないと、家族が言い切ってしまえば、それで指しゃぶりに対する価値観も決定します。

家族が楽しそうに、その話をすれば、例え、指しゃぶりでからかわれて帰ってきても、それをすぐに家族に話すことができます。

 家族に話さず、一人で悩み始めたら「暗く」なります。

いじめっ子にとって、「暗さ」は美味しい餌です。

からかっても明るい子は、いじめっ子にとって、美味しくないのです。

 みんな、いろいろな癖があって当然です。

それを、明るい家族の会話の中で出し合えていれば、指しゃぶりが直らなくても心配いりません。

 もしかしたら、家族に何度も笑われるのが嫌ですぐに指しゃぶりを直そうとするかもしれません。

2 人間は、一人一人、違う価値観を持っていることを知っている人に育てる

 指しゃぶりとは直接関係ありませんが、いじめの根本原因は、ここにあります。

 誰もが同じ価値観を持って生きるべきだと思い込んでいる子は、もし会話力と暴力が強ければ、いじめのリーダーになるし、もし会話力と表情力が弱ければ、いじめられる子になります。

 人は、みんな違う価値観を持っていることがわかり、それをゆったりと受け入れたり、それが分かった上で議論する子は、いじめっ子にもいじめられっ子にもなりません。

 世の中にはいろいろな価値観があると、ニュースを見ながら日頃から話題にしている家庭の子は、友達に対しても寛容な人に育ちます。

3 思いついたことは全部やる

 親は、子どもの事について、思いついたことは、全部やった方がいいです。

今回、「速効よい子」に相談してみよう、と思いついて相談してみた…これが大事です。

大した返事はもらえなくても、これを話題にして、また、誰か詳しい人と話すこともできます。

 小児専門の心療内科も気になっているのですから、一度行ってみるとよいと思います。

心療内科という言葉を重く受け止める風潮は、まだ多くあるようですが、風邪をひいて内科にかかるのと同じです。

発熱、咳などのように、心の調子が悪いと思ったら、診てもらえばいいのです。

ただし、内科同様、服薬については慎重に考えてください。

 歯の矯正も少し気になっているようですから、こちらは、歯科衛生士さん、お友達やネットから、もう少し情報を集めて決定しましょう。

情報を集めて、納得できたら始めるし、納得できなければやめる、それだけです。

 思いついたのに、全く何もしなかった、では、ずっと、それに引きずり回されます。

やってみても駄目だった、なんてことは、いくらでもありますが、やってみた結果なら、前に進めます。

 修学旅行までは、まだ3年、結婚までは、もっと沢山の時間があるのですから、とにかく悩んで思いつくことがあったら、行動に移してみましょう。

親として、こうして悩み、行動したことは、人生最大の宝物になります。

人生の中で、子育て以上に、険しく、そして、良い景色を見られる山はありません。

 いじめっ子、いじめられっ子にならない方法が、もう一つあります。

それは、お子さんに世界をたくさん持たせることです。

 いじめというのは、閉鎖された集団の中で起こります。

その小さな世界の中の構成員が、自分にはこの世界しかない、と考えた時点で、いじめる子といじめられる子が発生します。

 アフリカに発生した人類が、困難を乗り越え地球の裏側までやってきたのは、いじめられた人たちが、そこから逃げるために新世界を求めたから、という説があります。

この説でいくと、日本は、いじめられっ子の吹き溜まりになります。

 力が弱く、いじめられたら、そこで我慢するのではなく、新しい世界に挑戦していく。

いじめられっ子のはずだった祖先をもつ私たち日本人は、結局は、新しい世界を求めたことで、今、世界で最も豊かな暮らしをしています。

 話がそれてしまいましたが、私たち祖先が歩き続けたように、今、生きている世界は小さく、本当は、もっと沢山の大きな世界があると気づいた子は、小さな世界のいじめに参加するのが馬鹿らしく思え、例え、いじめられる側に立っても、心に余裕を持てます。

 暗さは美味しい、明るさは不味い、と書きましたが、心の余裕も不味い餌です。

 お子さんは、学級以外に、どんな世界を持っていますか。

近所の子供集団、少年団やお稽古の子供集団、お父さんお母さんのお友達の子供集団、親戚が集まった時のいとこなどの子供集団、…、こういう世界が沢山ある子は、いじめとは関係なくなります。

 ただ、お子さんが沢山の世界を持つためには、親も少し頑張らなくてはいけません。

近所のみなさんと仲良くする、職場や趣味の友達を大事にする、親戚付き合いを大事にする、…、これらを親が面倒だと思ったら、子どもの世界は増えません。

親が、たくさんの人たちと人生を楽しんでいれば、子どもの人生も楽しくなります。


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