料理を手伝う

 このごろ、ぼくは家で料理をします。母さんは、すごく助かると言ってくれます。ぼくは料理が好きで、10こくらいのメニューは、一人で作れそうな気がします。
 麻婆豆腐を作ったときに、料理って大変だと思いました。それは、作り方ではなく素早さです。にらを切っている時、魚の焼け具合を見たりして、一度に二つの仕事をするので、けっこう動きます。母さんが毎日こんな大変なことをしてると知って、すごいと思いました。これからも、大変な母さんを助けて、手伝いをしていこうと思います。

 家のお手伝いでも、ただ作業を命じられてそのとおりするのではなく、全権を任されたとき、初めてその仕事の大変さがわかります。誰でも、「お父さんやお母さんは大変だなあ。」という感想を持つと思います。B君のいいところは、なぜ大変なのかという理由にまで言及していることです。多分B君も、一度や二度の料理では気づかなかったでしょう。10個のメニューと言える自信を持てるほどたくさん数をこなしたから、わかったことではないかと思います。

 素早くやるというのは、非常に大切なことです。レシピにいっぱしの蘊蓄を傾けられる人なら、どんな人でも、時間さえたっぷりとかければおいしい料理の一つや二つできるでしょう。しかし家庭料理のプロも、レストランのプロも、一つの料理に何十時間もかけてはいられません。素早く短い時間でおいしい料理を作れなければいけません。

 これは、どんなプロフェッショナルにも言えます。職人さんはいうに及ばず、接客業から芸術家まで、素早く、正確に、しかもたくさんこなせるように一つ一つの仕事の負担をできるだけ減らすことは、プロとして生きていく条件です。
 いつも「早く、楽に、正確に」を合言葉に授業を進めています。ひとつのやり方、考え方を見つけても、もっと早く、もっと楽に、もっと正確にやることができないかを常に追求することが能力を高めるために大切だからです。この「早く、楽に、正確に」は、自分の夢を追いかけるのをあきらめない限り、一生追求し続けることになるでしょう

 家庭での自分の役目から発見したことが、勉強に生きる。勉強したことが家庭生活や将来の人生に生きる。B君たちのように、目の前のことすべてに全力を尽くしていれば、そこから得た物は、あらゆるフィールドにリンクしていくのです。

 家で料理を任されて、お父さん、お母さんを家庭料理のプロとして尊敬している皆さん。君の家の家庭料理のプロは、有名レストランのプロのシェフよりすごいんですよ。だって、何年も何年も、毎日毎日食べても飽きない味付けを知っているんですから。
 

                    One of Crewへ            ホームへ