算数の単位

単位

 算数で単位の勉強をしています。1年生の時からやってきたいろいろな単位のまとめをする学習です。小学生の単位の学習は、1mはどれくらい、1gはどれくらい、と、実際の長さや量に即した学習をします。いろいろな計算式を使って問題を解きもしますが、イメージや実感として量をつかむことが第一の目的です。

 そうやって積み重ねてきた勉強を、数学的にまとめるのが、今やっている算数の勉強です。ここへ来ると、今までと勝手が違って、難しい、わからないと錯覚してしまう子が出てきます。これまでの6年間に学習したすべての単位が一度に出てきてしまうのですから、そういう錯覚に陥っても仕方がないかもしれません。しかし、それは、錯覚に過ぎないことは確かで、落ち着いて考えれば、これほど簡単な物はないのです。

 とは言うものの、この勉強には、小学生時代、私も泣かされました。誰かが教えてくれたのか、自分で思い込んでいただけなのか確かではありませんが、ここに出てくる単位の関係を闇雲に暗記しなければならないと思い、ただ暗記に必死になっていたからです。自分がそうだからといって、こういうのは失礼ですが、お父さん、お母さんの中にも、私と同じ苦い経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 今、授業でやっているように、この単位のまとめの学習は、暗記する学習ではありません。上手にできている数学の仕組みを知り、とらえることで、頭の中を整理する学習なのです。そこを勘違いして、テストのために暗記しなければならないと思い込むと、ここは地獄の1丁目と化してしまいます。あせらずに頭の中を整理した人が、ここを乗り越えられます。乗り越えるどころか、数学の楽しさや便利さ、それゆえの簡単さを知ることができるのです。

 しかし、全く努力なしでマスターできるというものでもありません。暗記しなければいけない物もいくつかあるし、手になじませる作業もあるからです。では、実際に、何を暗記し、どんな作業を手になじませるかをまとめておきましょう。

暗記

 どうして世の中に暗記しなくてはいけないものがあるのでしょうか。暗記という言葉さえなければ、こんなに楽なことはありません。自然な生活の中で自然に覚えていけるものだけ覚えればいいではないかと、時々弱音を吐きそうになります。しかし、そうもいきません。オリンピックで活躍している選手は、ただ自然に生きて、自然に身についた能力だけで闘っているでしょうか。

 人より少しうまくできるようになりたいと思ったら、少しだけ自然より無理をしなくてはいけません。石油もその他の資源も何ももっていない日本人が、人が幸せになるような仕事をして、自分の生計を立てて行くためには、やはり、自分を高めるために、自然より少し無理をしなければいけないとあきらめざるをえません。

 さて、ここの単位の学習で暗記しなければいけないものを並べてみます。
・量には、それぞれ基本となる単位がある。m,g,l,a。
・長さの単位はm。1mは両手を広げたくらいの長さ。
・重さの単位はg。1gは1円玉1個の重さ。
・広さの単位はa。1aは10m×10mの正方形の広さ。
・体積(容積)の単位はl。1lは10p×10p×10pの立方体の体積。
・広さはu、体積はm3でも表せる。
・基本の単位の千倍はk、百倍はh、十倍はD(教科書ではda)。
・    〃      十分の一はd、百分の一はc、千分の一はm。
・1kgの千倍は1t。
・水1lは、約1kg。

 こう書くと、随分たくさんのように見えますが、全く新しく出てきたのは、下の二つと、D(デカ)だけです。(Dは、単位を整理するために必要ですが、意味が分かってしまえば、この先使うことはほとんどありません。)上の八つは、1年生の時からやっていることなので、よほど長い期間まとめて休んでいた子以外は、大丈夫でしょう。

 さて、では今度は、これを使ってどのような作業を手になじませて、単位換算を早く、楽に、正確にやってしまうかです。

単位換算

 「3.2?は何gですか」「?はgの1000倍だから、1000をかけて・・・」こんなふうにやっていては、全然だめです。単位という数学の良さを生かしていません。しゃもじでみそ汁をすくっているようなものです。何倍だとか、何分の一だとか計算しなくてもいいように、単位の仕組みはできているのです。

 まず、手になじませなくてはいけないのは、単位表作りです。これは、暗記というより、仕組みを考えながら何度か自分自身で書いてみれば、自然に出てくるようになります。

                      k h D 基本 d c m

 昔、「キロキロと、ヘクト出掛けた・・・」などと教わった覚えもありますが、そこまでしなくても何度か書いていれば、12歳の脳なら大丈夫でしょう。
 単位表ができたら、そこへ数字を当てはめれば、自然に答えが出てきます。頭の中に単位表が書ける人は、頭の中でやればいいし、そうでない子は、ノートやテストの隅に単位表を書けばいいでしょう。

 上の問題の場合は、kの下に3、hの下に2を入れます。gは基本の単位なので、そこまでの空欄に0を入れれば、答えは自然に3200となります。ここでのこつは、いつでも「1の位」に注目することです。3.2kgの1の位は3です。だから3をkの下に書きます。何gでしょうと聞かれています。ですから、gのある基本のますが、1の位になるので、あわてずに、そこまで0をていねいに入れていけば良い訳です。

 uとm3は、少し事情が違います。uは隣が10倍の10倍になるので、一ますずつ間が空きます。m3は、10倍の10倍の10倍になるので、隣に行くまでに2ますずつ空きます。

                      k h D u(基本) d c  m
                   k  h  D  m3基本  d   c   m

 この表を使って、3.2uと3.2m3を換算すると、それぞれ3200000ミリu、3200000000ミリm3となります。

単位換算2

 あと、ネックになるのは、uとa、m3とl.の関係でしょうか。しかし、これも冷静に単位の仕組みをとらえれば、何ほどの物でもありません。

 まずaですが、これは10m×10mの正方形です。(ちなみにこれは、4年生の学習です。)10mというのは1Dmのことですから、1aはちょうど1Duということになります。昨日の単位表のDuのところにaを入れてみましょう。1aは100u、すなわち、10m×10mだということと一致します。

 haはどうやって覚えていたでしょうか。aの100倍でしょうか。それとも100m×100mの正方形でしょうか。どちらから考えても、昨日の表に入れてみると、haはちょうどhuと一致するので、使うのには大変都合が良くなっています。

 次にlとm3の関係を見てみましょう。1lは、10p×10p×10pの立方体です。10pは1dmですから、1lは、1dm3ということになります。昨日の体積の単位表にlを入れてみましょう。dの所に入ります。すると何と都合の良いことに、1klは1m3、1mlは1cm3と同じになってしまいます。
 また、水の1l重さが約1kgですから、これも都合の良いことに、1m3が1t、1cm3が1gとなってきます。

 単位表を書くことが手になじんでいさえすれば、0がたくさんついたり、小数点のややこしい移動があったりする複雑怪奇な計算はしなくてすみます。こうして、理論をうまくつかむことで、速く、楽に、正確に、が実現されるのです。

 暗記しなければならないこと、手になじませなければいけないこと、これを間違えずに選択すれば、脳の中はきちんと整理され、能力は高まっていきます。よく、学校の勉強は実際の社会の役で立たないという人がいますが、その人は、無駄な迷路をたくさん通って、学習することを苦しみだと思い込んでしまったかわいそうな人ではないかと思います。その学習で何をどうすればいいのかをきちんとつかみさえすれば、それが脳を効率よく発達させるのですから、たとえ、やった内容が、直接仕事に生かされることがないとしても、その学習は無駄にならないわけです。

 勉強しましょう。脳を鍛えましょう。脳は、私たち人間が幸せになるための、この国の最高の資源なのです。
 

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