積年
誰かが紡いでくれた糸を
縦横に組み合わせ織っていく
そよ風にさえ吹き上がる薄い布を
何日もかけて織り上げることもあれば
手触りの良い温かな厚めの布が
一日で仕上がる日もある
涙にぬれた布も
数日陽に干せば
昨日とは少し違うけれど
また温かな布に戻る
積み重ねた布は
すでに床の冷たさを通さず
心地よい時間を約束してくれる
もう、そろそろ
織るのをやめてもいいのかな
そう思いながら
とりあえず今日も
これまでの五十九年と同じように
誰かが紡いでくれた糸で
人生の布を織り続けている
文芸やいづ 第27号 掲載
うたの部屋へ ホームページ「季節の小箱」へ