テレビサイズ
遠い空のオーロラ
瞳の色の違う国の人
生まれる前の時代の鮮やかな祭典
七つの海の航海
宇宙からの地球
手に入るはずのないものが
テレビの画面から部屋にいくつもやってくる
現代に生まれた幸せを感じて
テレビのスイッチを切り
もうすぐ帰ってくる人を待つため
表に出た
見慣れた夕ぐれの空は
淡い朱から深い青に
なだらかにつながっている
目の前だけでなく
頭の後ろまで広がる空の
中間色を表す言葉はわからない
凪の時間なのに
一瞬だけ風が吹く
髪の先が額をくすぐり
虫が鳴き出す少し前
小石の動く音がした
遠くから
脈絡のない「ありがとう」の声が聞こえ
路地の匂いに混じって
隣りの夕食が香ってくる
いつもの風景が
テレビサイズを越えた豊かさで
毎日五感に降り注いでいることを
忘れていた
遠くで手をふるあなたがここまで来たら
「おかえり」と言って抱きしめよう
きっとやわらかであたたかなあなたから
「ただいま」とやさしい声が返ってくる
掲載「文芸やいづ」第19号
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