子供の成長には4年ごとの節目がある

読者の方からのお便り****************************
 6歳は、小学校入学、14歳は思春期真っ只中、18歳は大学進学へ向けての節目なのかなと思うのですが、10歳はどのような節目だとお考えでしょうか?ぜひ教えていただきたいです。
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 日本の学校は、6歳、12歳、15歳、18歳と区切られています。(7年区切りの国もあるそうです。)

「三つ子の魂、百まで」という言葉もありますので、3年、もしくは、6年ごとに成長の節目があると考えられてきたようです。

 ただ、入学式を見ると、小学校1年生と11歳の6年生では、同じ小学生ではあっても、すでに、大人と子どもほどの違いがあります。

これは、小学生の6年間のうちのどこかに節目があるということです。

小学生をよく見ていると、第二次性徴が始まる4年生から5年生になる時の変化が大きい子が多いように感じられます。

 運動神経系が9割以上出来上がってしまうのが10歳前後というのは、多くの研究でわかっていることのようですので、それも考え合わせると、

 1 乳歯と永久歯の入れ替わりの時期。

 2 第二次性徴の始まり。

 3 第二次性徴の安定。

 4 身長の伸び止まり。

 という4つの時期を元にした、6歳、10歳、14歳、18歳という4年ごとで区切ると考えやすくなると思います。

体が大きく変化すれば、その指令を出す脳も、体と共に成長する心も、大きく変化しているはずです。

 この区切り方を元にして、子ども達にどんなふうに勉強させ、何を考えさせるかということを、少しずつ変えてやると、子どもも意欲を持続できるのではないかと思います。
 まず、学習についていうと、

〇6歳までは、好奇心をむき出しにして自由に動き回る

〇6歳から10歳までは、わくわくする心を持ちながらも、素直に人の話を聞く

〇10歳から14歳までは、素直に人の話を聞くとともに、継続する習慣を持つ

〇14歳から18歳までは、自分のしたいことのために、それに関する広い知識や技術を取り入れようとする

というような態度が、能力を伸ばしていくと思います。

 これを小学校の学年にあてはめて考えると、

〇1年生になったら、落ち着いて座り、先生の話を聞く、

〇5年生までに、続けることができるという力をつけておく、

ということが重要になります。

 また、心の動きでいうと、10歳までは、お父さん、お母さんだけが頼りなので、親の価値観にしたがって行動しますが、10歳から14歳までは、大人になる準備として、親の価値観を疑ったり嫌ったりします。

ですから、子どもが10歳になるまでは、親は自分の価値観が正しいのかを慎重に確認しながら子どもに接する必要があり、10歳からの子どもの変わり様は、成長の一つの表れだから心配しなくてもいいという余裕を持つことが重要です。

 では、誕生から18歳までを、少し詳しく考えてみましょう。

 生まれてから6才までは、徹底的に自由に学ばせたいものです。

興味をもったものには、すぐにその場所に行かせ、目だけでなく、耳、手、鼻、全身の皮膚で、その不思議を味わわせましょう。

 この時期、大事なのは、全身の感覚を使うこと。

そして、人とたくさんふれあうことです。

全身を使うことの大切さは、多くの研究者も口をそろえて強調しますが、人とふれあっておくことを、これと同様に大事なことだという人は、少ないかもしれません。

でも、これは、6才から学校で学ぶために、とても必要なことです。

先生の話を聞くのが大好きな子と、話を聞くのが苦手な子では、学習成果に大きく差が出るからです。

 6才になると、小学校に入学です。

乳歯が抜け、永久歯が生え始めます。

「大人の歯」が生える、すなわち、体が一つ大人になるということです。

これまでより落ち着きの出るこの年齢に、日本は、小学校を用意しました。

 ここで、大人が押さえておきたいことは、3つあります。

 まず、子ども達が目を輝かせるものを用意することです。

大人になったといっても、まだ6才。

興味がわかないものでは、がんばっても、集中力は続きません。

目を輝かせるものを与えれば、子ども達は、考えることを続け、話もしっかり聞きます。

 2つ目は、体におぼえさせることや後々使う技術を、しっかり体に馴染ませることです。

これは、次の時期(10歳〜14歳)に入ると、同じことを身につけようとしても、何倍も時間がかかってしまうからです。

鉛筆を正しく持ち、字をゆっくりしっかりと書くこと。

声を出してすらすら本を読むこと。

四則の簡単な計算。

逆上がり、前転・後転、基本的な縄跳び。

その他、将来のために体に馴染ませておきたい物を簡単に身につけるには、最後のチャンスの4年間だと思ってください。

この時期、同じお金をかけるなら、学習塾よりも、体で覚えるピアノ教室や書道教室の方が、コストパフォーマンスは何倍も高いはずです。

 3つめは、発見↓疑問↓発見↓疑問↓発見↓…というサイクルができるように、発見したり、疑問を見つけたりした時に、それがすごいことだと教えてやることです。

「これ、すごいよ」「どうなってるのかなあ」「どうしてかなあ」「こうすれば、いいんじゃないかなあ」

 こういう言葉を発した時、大人がそれに応えてやれば、子ども達の思考のサイクルは自然に動き出すようになります。

 この4年間は、「予習」は必要ありません。

逆に、予習が学習の邪魔になることもあります。

予習の仕方を間違えると、学校で学習の題材に出会う喜びがなくなり、教室での思考が停止するからです。

6才から10歳までは、「身につけるべきこと」を身につけるための復習を、家で楽しくやれた子が、後々、伸びます。

 4年生までは、「今日の授業は何をやるのかなあ」とわくわくしながら登校するのがベストですが、中学校に入ると、学習の情報量は、小学校とは比べものにならない多さになります。

5年生から2年間は、中学校に向けて、「今日の授業は、この疑問を解くぞ」と意欲的に登校できるように、少しずつ移行していきましょう。

6年生に出している「予定帳の宿題」は、「予習の習慣」を身に着ける導入として効果があります。

 また、予習の気持ちを持たせるとともに、これまでの発見→疑問→発見→疑問→発見→…というサイクルを、発見→疑問→予想→検証→疑問・発見→…というサイクルに膨らめてやると、さらに思考が深まっていきます。

 第二次性徴が始まっても、それが安定しないこの時期は、気持ちが体に追いつかず、心も不安定です。

そういう時に、「明日」は「明るい日」であることを伝えてやると、心の不安定感が少し緩和されます。

今、自分を悩ませている疑問に心をからみとられて苦しむのではなく、疑問があるから明日が楽しい、という毎日を送らせてあげたいと思います。

 第二次性徴が安定してくる14歳。義務教育の終わりも目の前に近づいています。

体が大人になるタイミングで、義務教育は終わります。

大人になるのですから、これからは、自分の道を自分で考えなくてはいけません。

実際には、日本では、15歳で将来を決めるのは難しい状況にあることは確かですから、親に経済力があるなら、高校に行かせてやるのは正しい選択の一つだと思います。

 大人の体になったといっても、18歳までは、まだ少し、体の力も伸びる時期でもあります。

でも、高校は小中学校の続きではありません。

高校は義務教育ではないのです。

なぜ高校へ行くのかを自分でしっかりと考え、3年間を自分で責任を持って過ごさなければいけません。

 高校を卒業すると18歳。

 18歳を越えてもぐんぐん身長が伸びるという子は稀です。

自然な体の成長は、ここで終わります。

体も脳も心も、もう自然に生きているだけでは伸びません。

それどころか、自分でしっかりと目標を持って鍛えていかなければ、体も脳も心も衰えていきます。

 そういう18歳の時に、日本では、将来の道を選ぶことが要求されます。

どんな職業に就くのか、どんな学問をやっていくのか、など、自分で選んで、それぞれの道を歩き始めるのが18歳です。

ですから、14歳から18歳までが、がむしゃらにいろいろなことに挑戦できる最後の期間だと言えます。

 6年生の子ども達には、18歳までは、すべてのことで好き嫌いをせず、目の前にある課題に全力で取り組みなさい、と言って卒業させます。

体(脳)が自然に成長している間は、何をやっても、それが全力投球なら、すべてのことが自分の栄養になるからです。

とにかく、18歳までの間に、何にでも体当たりでぶつかった子は、18歳になった時に自然に、自分は何が好きで、何が合っていて、どんなことで人に貢献できるかが、ある程度分かってくるはずです。

 それまでの間に、「自分はこれが好きだ」と見つけるのはいいのですが、それゆえに、その好きなこと以外には手をつけないというのでは、人生のどこかで、「好きなこと」について迷いが生じた時、自分の道を見失います。

18歳まで、すべてのことに全力で取り組めた子は、その先、ずっと自分を信じて生きていく土台ができると思います。

 そういう子になるために必要な能力は「素直さ」です。

素直に人の言うことを聴き、とにかく言われたとおりに試してみる。

「素直」という言葉からは、人の言うことに従う大人しい子というイメージを持たれることもありますが、大人しく聞いていることは「素直さ」ではありません。

大人が楽しそうに話すことを、「楽しそうだなあ」と感じ、自分もそれに挑戦してみる。これが素直な子です。

 挑戦してみた結果、どうしても自分には必要ないと思えば、そこでやめればいいのです。

そこでやめても、体と脳が自然に成長し続けている18歳までなら、そこまでにやったすべてのことは、決して無駄にはなりません。

「素直な子どもに育てる」ことが、「能力を伸ばし才能を開花させる」ための究極の子育て法ではないかと、思います。

読者の方からのお便り****************************
いつも 楽しく拝見させていただいています。
息子も14歳ですので 反抗期も終わりに近づき 思春期を楽しんでいるところです。
あと4年。色々な意味で自分探しをしていってほしいなと思っていたところ、心にストンと落ちるお話でした。これからも楽しみにしています。
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 子育てに、少し躓くと、子育ての期間が永遠に続くように感じることがあります。これは、その先に待っているものが不明だからで、第一子を育てる時には、誰も感じることです。

第二子以降の子育てに余裕が出てくるのは、その先に起こることが予想できるからです。

 細かな問題は、いくつも起こりますが、18歳までの流れを知り、4年ごとにある節目を意識することで、お子さんを見つめる瞳にも余裕が生まれます。

親の見方に余裕が生まれれば、お子さんは、さらに、よい子に育ちます。

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