大人がしてやれること

 保護者面談で、力を伸ばしている子のお父さん、お母さん方にいろいろなことを教えてもらいました。それをまとめると、大人がしてやれることが3つあることがわかりました。

1 まねをさせる

2 鬼になる

3 新しい環境を与える  です。

1 まねをさせる

 感想文の宿題が苦手な子は本写しでもよいとした、と保護者会で説明しました。

 保護者面接では、それを喜んでくれるお母さんもいたし、こんな機会でないと本を読まない子なので、それは困るとおっしゃるお母さんもいました。

 感想文を書くようにがんばらせたいというお父さん、お母さんはとてもよいと思います。

見守ったり励ましたりすることで、親のエネルギーが自然に子どもに伝わるからです。

大人のエネルギーを伝えることが、子育てでいちばん大事なことだと作曲家の橋本さんが言っています。

 もし、感想文を見てやれない、うちの子は感想文で苦しむより本写しの方が力がつきそうだと思ったら、写すものをいっしょに探してください。

速効性のあるのは、同じ小学生が書いた優秀な作文です。

 今年は4年生の担任ですので、面談の時に、お父さん、お母さんには、5、6年生の優秀作文を写すようにお勧めしました。

「作文 入選 小学生」などの言葉で検索すると、過去のコンクールの優秀作文がネットでたくさん見られます。

 「まなぶ」は、「まねる」という言葉から発生したという説のとおり、子どもはまねることで、力をつけます。

お父さん、お母さんがよいと思ったものは、何でもまねさせてください。

まね続けるだけでも、子どもは確実に伸びます。

 もしそれが、お父さん、お母さんのすることをまねるのだったら、最高です。

 脱いだ履物をそろえる、どんなことにもすぐにありがとうと言う、にっこり笑う、…。どんな小さなことでも、お父さん、お母さんの行動をまねさせると、お父さん、お母さんのエネルギーは直接お子さんに届きます。
 
2 鬼になる

 ほめて育てる、という方法があります。

人はほめられるとうれしくて、がんばることができます。今までになかった力を発揮することも少なくありません。

 「ほめて育てる」は最高の子育て法ですが、ひとつだけ欠点があります。

 それは、「ほめられることだけをモチベーションとしてやっている」子は、ほめてくれる人がいなくなったら、力を発揮しなくなるということです。

 ほめてくれる人がいなくなっても、力を発揮し続けるためには、もうひとつの要素が必要です。

それは、子どもが、自分自身に感動し、自分をほめることです。

 心から自分に感動し自分をほめるのは、とても重要なことです。

人間は、「一人の時間」にどれだけがんばるかによって、伸びる力の量が違うからです。

周りに誰もいない時にがんばれる子は、ぐんぐん伸びます。

自分の力の伸びに感動したことのない子は、残念ながら、一人の時間に努力ができません。

 さて、心から自分をほめるためには、上面の言葉だけでなく、それなりの「証拠」が必要です。

先日の面談では、Aさんのお母さんが、

「うちの子は、4月の書き取り帳と7月の書き取り帳を私に見せて、こんなにうまくなったんだよ、と言いました」という話をしてくれました。

 Aさんは、4月から、まじめに毎日、書き取りの宿題を続け、とても上手になりました。

Aさんは、自分ががんばって練習を続けた結果、字が上手になったという証拠を手にして、自分をほめることができました。

がんばれば自分はできるようになる、というこの小さな成功体験は、Aさんを一生支え続けるでしょう。

 どの子も、それがどんなに小さなものでも、こんな風に証拠のある成功を体験できれば、ほめてくれる人がいなくなっても、その後も「成功」を積み重ね、力を伸ばしていけます。

 でも、残念ながら、多くの子はそれができません。

 どの子も、新しいものには飛びつきます。最初はどの子も夢中になって取り組みます。

でも、しばらくやってみて、それがうまくできないと、飽きてしまいます。もう少しだけがんばり続ければできるようになる、というところでやめてしまう子がとてもたくさんいるのです。

 あることができるようになるためには、本人が思っているのより、ほんの少しだけ長い時間(期間)続ける必要があるようです。

若い人が、わずかな期間で「この仕事は自分に合わない」とやめていくのも、ここに原因があると私は考えています。

仕事が自分に合っているかどうかは、その仕事のスキルが身につくまで我慢してやってみないと、本当はわからないはずなのです。

 さあ、ここが大人(親、先輩…)の出番です。

お子さんにがんばらせたいことは、それができるようになるまで、ほめて、励まし続けさせてください。

それでもだめなら、鬼になってください。

この子にとって、それを身につけるのが大事なことだと判断したら、親は鬼になってでも、それを続けさせ、身につけさせなければいけません。

 もしかしたら、生きている間に、子どもから「あの時、鬼になってくれてありがとう」と言われないかもしれません。

でも、そうして身につけたことや、身につけたことで感じた成功体験は、必ずお子さんが人生に花を咲かせるのに役立っていくはずです。

 今、自分が鬼になってでも、お子さんに続けさせ、身につけさせたいことは何ですか。

読者の方からのお便り*****************************************

 今年も八月より新人が配属されてきました。

「小さな成功体験」をつませて自信をつけさせたいと考えています。

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読者の方からのお便り*****************************************

 自分を褒めることってとっても大事ですよね!

今は長男には陸上、次男にはピアノを頑張って欲しいなーと思っています。

自分を褒められる子になってほしいです。

私自身もそうありたいです。

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読者の方からのお便り*****************************************

 褒めて褒めてと心がけていますが、ついつい余計なことを言い過ぎてしまいます。

自分の成果を自分で感じることも大切ですね。違った言葉の魔法も考えてみます。

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 お便りを読んでうれしかったのは、どなたも、子どもや社員のために、ご自分が変わろうとしていることです。

 自分が少しだけ変わるだけで、自分の周りの世界も変わります。

苦手な人に、思い切ってにっこり笑いかけたら、実はその人も前から私と友達になりたいと思っていてくれたことがわかって、すごくうれしくなったことがあります。

もしかしたら、それがよい連鎖をして、自分の知らない場所でもよいことが起こっているかもしれないと思うと、なんだかわくわくして、さらにやる気もわいてきます。

3 新しい環境を与える

 少し前に、ローマ字の学習と同時にタイピングを練習しました。

 ローマ字もタイピングも、子ども達はがんばって学習を続けたのですが、この学習で思わぬ副産物がありました。

それは、座る姿勢です。

 学習するときに、よい姿勢を保つことはとても大事です。

肩の力が上手に抜けたよい姿勢を保つことで、集中力が、より長く持続するからです。

 ところが、多くの子どもは、普段、よい姿勢を保てません。教室では、背中を丸めて座っている子が多く、この姿勢では肩がリラックスできず、集中する時間が短くなります。

時々注意するのですが、それくらいでは、なかなか直りません。

 今回、タイピングの練習をするにあたり、姿勢が特に重要だと考えたので、パソコン室でタイピングを練習する際には、「人差し指をホームポジションにもどす」と言うたびに、「よい姿勢で」と付け加えました。

 ある時、ふと気づくと全員が、よい姿勢でタイピング練習をしていることに気づきました。

その日から、パソコン室に行くたびに言っていた「よい姿勢で」は言う必要がなくなりました。

 と、喜んだのも束の間、教室に戻ると、またいつもの丸まった姿勢で、一所懸命勉強しています。

ところが驚いたことに、またパソコン室に行くと、全員素晴らしい姿勢で1時間過ごします。

 まだ限定的ではありますが、彼らは大事なことをひとつ身につけることができました。

 子どもはいつも好奇心旺盛で、新しいものには飛びつきます。新しいものを与える、環境を変えてやる、というのは、子どもにとって、力を伸ばすチャンスです。

 友だちが持っている辞書をほしがるので買ってやったら、急に本の虫になった。

 子ども部屋を欲しがったが作ってやれなかったので、居間の隅に小さな机を置いてやったら、自分から勉強を始めるようになった。

 など、いろいろな例を見てきました。

 大人だって、少しだけ環境が変わるだけで、やる気いっぱいになれることがあります。

 大事なのは、子どもが何を望んでいるかを知ることです。

それを大きく外してしまうと、親も無駄なお金と時間を使うことになります。

 何を望んでいるのかを知るには、直接お子さんを見て、直接お子さんから聞く以外に方法はありません。

 最近、お子さんと散歩しましたか。

 あわてずに、ゆっくり見て、ゆっくり耳を傾けるのが、いちばんの早道です。

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