「親の日常」にする
本読みカードには、親の印を打つ場所があります。
家族に音読をきいてもらった証拠の印を打つ場所です。
時々、その場所に、コメントを書いてくれるお父さん、お母さんがいます。先日は、「休日に家族で博物館に行ってきました」というコメントがありました。
博物館や美術館に行くというのは、子どもにとって、とても良いことです。
ただ、ここで気を付けなければならないことがあります。
1回でも博物館、美術館に行くことは、子どもに良い影響を与えますが、本当に子どもに良い影響を与えたいと思ったら、それが家族の一大イベントではなく、家族の日常になっていなければならない、ということです。
家族の日常、ということは、親の日常ということです。
親が普段から、美術館や博物館に行くのを楽しみとしている家庭の子は、美術館や博物館が自分の「生活の中に普通にある」という豊かな人生を送ります。
よく、「人生の中で、一度だけ経験した○○が印象に残っていて、自分は、こういう道を歩いている」と言う人がいますが、それは、単なる勘違いです。
確かに、きっかけとなる一大事はあったのかもしれませんが、それによって自分が大きく変わるのではありません。
同じ出来事に出会ったら、その人たちは、みんな同じ道を歩くか、といえば、そんなことはありません。
オリンピックを生で見て感動した子どもが、全員アスリートを目指すかと言えば、そうではなく、その感動をエネルギーにして、それぞれが別の目標を持って、別の道を歩くのです。
このように考えると、あそこが良いと聞いたから一度行ってみよう、と、無理をして一大イベントとして遠くに行くよりも、日常の中で繰り返し体験できることが、その人を作っていくのであり、より重要だということがわかります。
もし、本好きな人になってほしければ、週に一度は、図書館や書店に足を向ける日常を作ってやればいいでしょう。
もし、元気で明るい人になってほしければ、親がいつでも、元気に明るい返事をするという日常を作ってやればいいでしょう。
もし、勉強好きな子になってほしければ、親が日常的に勉強(子どもの勉強ではなく、大人にとって必要な勉強)をしていればいいでしょう。
もし、優しい人に育ってほしければ、優しい言葉遣いをする家庭を作ればいいのです。
子どもは親の鏡です。親の日常が、そのまま子どもの人生になります。
子どもの幸せを考えたら、十年間、ちょっと無理して、親は日常を少し変えてみてもよいかもしれません。