理想の友達は赤鬼

 6年生の道徳の本に、友達に関するページがあり、「あなたにとって友達とは」という問いに答えて子どもたちが書き込むようになっています。

 子どもの書き込みを見ていたら、「いつでもいっしょにいてくれる人」「いつでも自分を励ましてくれる人」と書いている子がいました。

 「友達とは自分に○○してくれる人」…これは、危険だと思い、改めて子どもたちに「泣いた赤鬼」の話をしました。

 「泣いた赤鬼」は、浜田廣介さんという人が書いた作品で、

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心優しい赤鬼が、村の人と仲良くなりたいと思っていましたが、村の人たちは怖がって寄ってきません。

そこで親友の青鬼が「自分が村で暴れるから、僕を本気で殴って懲らしめてくれ。そうすれば、村の人は、君が良い鬼だとわかって仲良くしてくれるはず」という作戦を考えます。

作戦は大成功し、赤鬼は村人たちと仲良くなれます。

報告とお礼に、赤鬼が青鬼の家を訪ねると、青鬼はいません。

残された手紙には、「もし僕と君が会っているのを村人が見たら、村人は君から離れてしまう。だから、僕はもう君に会わない」と書いてあります。

その手紙を握りしめて、赤鬼はいつまでも泣いていました。

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というお話です。

 10歳以下の子が読む時には、「青鬼さんって、いい人だね」と感動してくれればいいなと思います。

 しかし、11歳以上の子は、それではいけません。

青鬼のような人が理想の友達だと思ってしまうと、先ほどのように、自分に何かをしてくれる人が理想の友達、本当の友達だと思い、一生、そういう人が現れるのを待ち、現れないことに不安や怒りを覚えてしまうからです。

 子どもたちの、友達とのトラブルのほとんどが、ここから発生します。

「あの人は友達なのに、自分に何もしてくれない」

これが、友達とのトラブルの原因なのです。

 改めて「泣いた赤鬼」をじっくり読むと、理想の友達は青鬼ではなく、赤鬼の方だとわかります。

 青鬼は、赤鬼の夢を叶えるために全力を尽くしました。

青鬼にとって、赤鬼は、そんなふうに思えるような最高の友達なのです。

 赤鬼がどういう人物かというと、「心優しい」とだけ書かれているだけで、お話の中にはくわしく書かれていません。

 赤鬼と青鬼の間にどんな歴史があったかはわかりませんが、赤鬼の心の優しさが尋常ではないほどなので、青鬼は、赤鬼のためなら何でもしてやりたいと思ったのでしょう。

青鬼は、本当に素敵な赤鬼という友達に出会ったのです。

 本当の友達というのは、自分に何かをしてくれる人ではなく、自分がその人のために何かをしたくなるような素敵な人なのです。

 14歳までにそれが理解できれば、友達とのトラブルはなくなり、人生は豊かでハッピーになると思います。

このお話を知っている方も、もう一度、親子で読んでみませんか。


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