ありがとうの形
全校児童集会で、こんな話をしました。どこかで読んだエッセーの受け売りです。
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(6年生2人にステージにあがってもらって)今から、この二人にある実験をしてもらいます。
この二人は、この1年間6年生として、全校のみなさんのために一所懸命働いてきたとてもよい人です。
3学期の目標は「感謝の気持ちを持とう」ですね。
この二人に、心を込めたありがとうの言い方を見せてもらいます。
では、A君、心を込めて「ありがとう」と言ってください。
(A君は、軽く礼をしながら上手にありがとうと言いました。どこからともなく拍手がわきました。)
では、B君も心を込めて言ってください。
(B君は、打ち合わせどおりステージに横向きに寝転がって「ありがとう」と言いました。目の前の1年生や2年生は声を出して笑っています。)
二人とも心を込めてありがとうと言ってくれました。
気持ちは通じたよね。
(低学年の子が口々に何か言っています。)
そうだね。
B君のありがとうは心がこもっていないように思えたね。
B君、君はいい加減に言いましたか。
それとも真剣に心をこめて言いましたか。
(B君が、心を込めて言いました、と応えます)
B君は心をこめて言ったのに、みんなには伝わらなかった。
なぜかわかりますか。
そうです。
きちんとした形で、ありがとうと言わなかったからです。
どんなに心を込めたつもりでも、きちんとした形ができていなければ、君の本当の気持ちが通じないことがたくさんあります。
この学校の1000人の子供がみんな良い子だというのは、私はよく知っています。
でも、大きな声であいさつできなかったり、道いっぱいに広がって歩いたり、廊下を走ったり、トイレのスリッパが整頓されていなかったりすると、君達がよい子であることが、他の人にはわからなくなってしまいます。
忘れ物はしていませんか。
勉強を一所懸命やっています、と言っても、忘れ物を毎日しているようでは、君のその気持ちは誰にもわからないのです。
きちんとルールを守ったり、相手が喜ぶような気持ちのよいあいさつをしたり、自分の行動にちょっとだけ気をつけていれば、君がよい子であることを、みんながわかってくれます。
3学期のテーマは、感謝の気持ちをもとう、です。
感謝の気持ちを持ったら、どんな風に表せば相手の人に伝わるかを研究してください。
どうすればいいかは教室に戻ったら担任の先生と相談してください。
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昔に比べて、子どもの心は変わっていませんが、それを表現する力が大変劣ってきたと感じます。
表現が下手なために誤解を受ける子も少なくはありません。
昔は、礼儀作法という名前で、大人がそういうことをきちんと教えていました。
どんな呼び方でもけっこうです。
お子さんに、「きちんとした伝え方、正しい表現方法」を教えてやってください。
繰り返しますが、子どもたちの心は昔と変わっていません。
ただ、表し方を誰からも教わっていない子がいるだけです。