型で100を伝える
運動会では、5、6年生が、組体操をやりました。
また、組体操の最初は、「ソーラン」を踊るのが、この学校の恒例になっているので、そのダンスの練習も始まりました。
担任から見ると、どの子も真面目に練習しているのがわかります。
しかし、残念なことに、子ども一人一人をよく知らない人の目には、不真面目にやっているように映る子もいるようです。
その原因は、手や足の「型」にあります。
手を横に水平に上げるポーズでは、本人は水平のつもりでも、実際には下がってしまっている子がいます。
両手を真上に上げるポーズでは、本人は真っ直ぐ上げているつもりなのに、実際には多くの子の手が前に傾いています。
足は肩幅より広く開くことが原則で、ポーズによっては肩幅の2倍の幅に開かなくてはいけませんが、本人はそのつもりでも、足の開き方が不十分な子が多いのです。
一所懸命やれば、その気持ちは必ず相手に伝わります。
しかし、残念なことに、気合だけでは、100の気持ちを100伝えることができません。
100の気持ちを、100全部伝えるためには、きちんとした手の上げ方、足の開き方という「型」がきちんとできることが必要なのです。
「型」がきちんとしていれば、逆のことも起きます。
どうもやる気がでなくて、70の気合の日も、型ができていれば、100として受け取ってもらえることもあるでしょう。
これは、体の動き以外にも当てはまります。
例えば、同じ気持ちで手紙を書いても、美しい字と汚い字では、相手に伝わる気持ちの量は、自ずから変わってくるのです。
ですから、型は、きちんと子どもに教えるべきです。
10歳までなら強制的に教えてかまいません。
子どもが不平を言う前に、子どもが型を身につけられるからです。
11歳以降は、型の必要性をきちんと理解させて型を身につけさせた方がよいでしょう。
11歳以降は、簡単に型が身につかないので、身につくまで本人の強い意志が必要だからです。
第1回目のダンスのレッスンが終わった後、子どもたちを集めて、この話をしました。
そして、大きな鏡の前に連れて行きました。
子どもたちは、自分の姿を鏡に映して、手の上げ方や足の開き方を直していました。
鏡を見る時のこつは、まず鏡の前に目をつむって立ち、自分が平行だと思うまで手を上げてから目を開けることです。
そうすることで、まず、自分の「これまで」を知り、どこをどうすれば良いかを考えながら直し、その違いを体に覚えさせることができます。
最初から目を開けて鏡の前に立ち、鏡を見ながら手を水平に上げると、自己正当化する脳は、鏡を見ながら、あたかも最初から自分が平行に手を上げていたように筋肉に指令を出してしまうので、これまでの動きを曖昧にしてしまい、結局、直らなくなります。
親子で鏡の前に立ち、気を付け、前へならえ、礼などの姿勢を楽しくチェックしてみませんか。
子どもの頃に覚えた「型」は、必ず人生のどこかで自分を救ってくれます。