自分の名前は届いているか
毎朝、健康観察をします。
今年の子たちは、保健係が出席番号を言うと、その番号の子が、自分の名前と「元気です」などと健康状態を答えるというシステムをとっています。
しばらく黙って見ていたのですが、先日、我慢しきれず、子どもたちに話しました。
名前の部分が聞き取れない発声の子が、あまりにも多かったからです。
人間は、「言葉をサボる」ようにできています。
生き物はみんな、できるだけ楽に生きようとする性質があるようで、話す行為も、できるだけ口を動かさずにしようとするのです。
古くは「書きて」が「書いて」、「取りて」が「取って」に、最近では「ありがとうございます」が「あざーす」に聞こえるようなものです。
自分の名前というのは、自分にとって当たり前のものです。
自分にとって聞きなれている言葉は、サボりやすくなり、また、自分がサボっていることに気づかず相手にしっかりと届いていると勘違いしやすいのです。
ですから、大人でも同じですが、自分の名前を言う時は、自分が思っている以上に、大きくはっきりと言う必要があります。
うまく言えていないことに対して、「声が小さい」とか「口をちゃんと開け」「もっと滑舌よく」といった注意をすることがありますが、これだけだと「精神論」になってしまいがちです。
大人なら、これでもいいですが、小学生には、こういう時は、きちんと技術を教えた方が、回復は速いし、子どもたちも、やる気を持てます。
声が小さい場合は、歌の発声練習のことを思い出させます。
滑舌の悪い場合には、どこをどうすれば治るのかを、具体的に説明するべきです。
ポイントは三つです。
一つ目は母音です。
「あ」「お」「う」のあごの降ろし方をはっきりと変えること、そして「え」と「い」の唇の引き方をはっきりと変えることを教えてください。
二つ目は、「マ行」です。
マ行の入っている言葉は、きちんと唇をつけるように教えます。
これによって「ありがとうございやす」が、きちんと「ありがとうございます」に聞こえるようになります。
三つ目は「ラ行です」
日本語のラ行は、ローマ字ではRで表しますが、実際の発音はLの方に近く、舌先は上口蓋をしっかりとはじく必要があります。
マ行ほどではありませんが、これができなくて発音が曖昧になっている子も少なくありません。
小学生は、「気合が足りない」「サボっている」ということも、しばしばありますが、やり方やこつを知らない故にできていないことも沢山あります。
そういう場合は、「しっかりしろ」と叱らなくても、方法さえ教えてやれば、こちらが思っている以上に、子どもは、やる気をもって、それを直そうとします。