届いたら、やさしい
小学校では卒業式を間近に控えると、体育館での練習が始まります。
体育館は、体育で体を動かさないと、まだ寒い季節です。
でも、6年生を送る会のデコレーションが残っているので、心は温かくなります。
小学校の卒業式では、「呼びかけ」というのを、送辞、答辞の代わりにする学校が少なくないと思います。
お父さん、お母さんも経験されているでしょうか。
「呼びかけ」は、自分一人の声を体育館に響かせなくてはならないので、とても大変です。
普段、教室でおとなしく生きている子には、「地獄の特訓」の日々になるのです。
でも、これを経験することは、とても大事なことだと思います。
○ 体の機能をフルに使う。
○ どんなことも相手に届いた時はじめて、やさしい人になれる。
この二つのことを身をもって体験するよい機会だからです。
2週間の練習ポイントは3つ。発声、発音、速さ、です。
まず発声。
とにかく大きな声を出します。音楽の時に腹式呼吸のトレーニングをまじめにやってきた子は、苦労しません。
また、普段、みんなのために働こうと、人の前に出てがんばっている子も自然に大きな声が出せます。
今年のクラスにも、いつもみんなの前にたって仕事をしようとしている子が何人かいて、その子達の声は、最初から素晴らしく体育館に響きました。
全員の呼びかけを録音して比べさせたところ、他の子もすぐにその子達のまねをして、大きな声が出せるようになりました。
多くの子が、自分はしっかり声を出していると思い込んでいたようで、録音したテープから、自分の声がほとんど聞こえないことにショックを受けたようです。
次は、発音です。
大きな声が出ても、言葉がはっきりしない子がとても多いのです。
「おくえんせーお、いちえんかんあ」
これ、何と言っているか、おわかりでしょうか。
「6年生の1年間は」と、本人は言っているつもりです。「ろ」→「お」、「ね」→「え」、「の」→「お」は、舌が弱くて、舌で上あごをきちんと弾けないので、こんな発音になります。
「1年間は」が「1年間あ」にしか聞こえないのは、唇をしっかり使えていないからです。
唇の力が足りなくて、しっかり上唇と下唇がつかない子も多く、「ありがとうございやす」と、昔のやくざ映画みたいになってしまう子も少なくありません。
さらに、息を押し出す力やあごを降ろす力が弱いと、「あいがとうごずぇいやした」となり、とても卒業式とは思えなくなってしまいます。
一度、じっくり、お子さんの発音を聞いてみてください。
気になる言い方はありませんか。
もともと人間の体は「より楽をしようとする」ようにできているようです。
口の動きも、しっかり意識しなければ、「さぼる」のです。
口をさぼらせないで、ていねいに話すことはとても重要です。
感情が体の中にあふれる子は、あごやくちびるもよく動きます。
最後に速さです。
相手の心に、より深く届けるためには大きさや強さと速さの工夫が必要です。
でも、この場合は声の大きさの調整が難しいので、速さで気持ちを表します。
というと難しそうですが、普段国語の本を真剣に音読したり、ペアの1年生によく本を読んでやっていたりする子には、簡単なことです。
細かく書きましたが、普段、家ではきはきと話ができる子は大丈夫ですので、心配ありません。
ちょっと心配なら、この3つのうち、一つだけ気をつけて、練習を聞いてあげてください。
読者の方の感想*******************************
うちの次女も発音が悪いです。やっぱりラ行などがヘタです。いい練習法があったら教えて下さい。
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簡単すぎると思われるでしょうが、歌を「ラララ〜」で歌うとよいかもしれません。
舌が口の上を弾く感覚を楽しんだり、弾く力を強くするのが目的です。
アナウンサーがするような大人の発音練習法もありますが、小さな子は、楽しんでいるうちにできるようになることが大事です。
お父さん、お母さんもいっしょに歌ってくれると楽しくなります。