避難所の助六ずし
読者からの御質問******************
以前のメルマガの中で、
「給食には、いろいろな目的がありますが、私は、・ごちそうしてくれたものは何でもおいしそうに食べ、残さないという能力を身につける・日本が突然つぶれた時、きちんと生き延びる力を身につけるという2つのことが大事だと思うので…」と書かれてあります。
上記の2点、とても大切なことだと思うのですが、2つ目の項目がどのように給食と関わっているのか、ピンときませんでした。
よろしければ教えていただきたいです。
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東日本の震災の時、娘は千葉で一人暮らしをしていました。
津波の被害が大きかった県のみなさんは本当に大変だったと思いますが、報道の少なかった茨城県、千葉県でも、ご苦労なさった方が多いと聞きます。
娘は当時、知り合いは職場の人だけで、ご近所はまったく知らない状態でした。
それでも、一人でアパートにいるのは危険だと思い、近くの公民館に避難したそうです。
誰一人知らない避難所で、どうすればいいか困っていると、祖母よりもお年をめしていると思われるご婦人から「いっしょにいましょう」と声をかけられました。
娘に食料がないことを知ると、そのご婦人は、コンビニで売っている小さな助六ずしの半分を娘に食べさせてくれました。
話を聞くと、数時間前、初めて近くのコンビニに食料が運ばれてきて、避難所の人がコンビニに殺到しました。
ところが、そこで、誰かが「これは貴重な食料だから、みんな欲張らずに、一人一つと決めて買うことにしませんか」と言いだし、そこにいた全員が賛成し整然と食料を買ったので、そのご婦人も、やっとその助六ずしが買えたそうです。
次に、いつ食料が手に入るかわからない時です。
一人分ともいえない少ない量の助六ずし1パック。その半分を見ず知らずの自分に惜しげもなく分けてくれた自分の祖母よりもお年をめしたご婦人。
その時のことを思い出すと、今でも涙が出てしまうと娘は言います。
うっかりすると、人間はこの世界を支配していると思ってしまいますが、こんなふうに、この星の身震い一つで、すべてを失うことだってあり得ます。
今は、日本という国に守られて、ぬくぬくと生きていますが、ある日突然、他の国と衝突したり、日本自体が経済破たんをする恐れが全くないわけではありません。
嫌いだと言っていた食材、食べられないと泣いていた給食どころか、食べ物がすべて、一瞬で消えてしまう日が、ある日突然やってくることはない、と言い切れる人はいないのです。
不幸な未来を予測しろとは、子どもたちには教えませんが、この助六ずしを幸せいっぱいの顔で食べることのできる人間に育てたいと、強く思います。
読者の方からのお便り*****
感動しました。
震災関連のニュースやドキュメントで何度も涙が出ましたが、娘さんの実体験も劣らずいい話です。
極限の状態で手助けできるって素晴らしいおばあさんですね。
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お寿司を分けてくれたご婦人の中にある「人間としての素晴らしさ」を、日本の子供たちが未来につないでいってほしいと思います。