おなかがすく
私の勤めていた学校には、年に数回、ハートランチデーという名前の日がありました。
普段は給食ですが、この日はお父さんやお母さんの作ってくれたお弁当を食べます。
子どもたちは、本当にうれしそうです。
6年生でも、いつもと全然違う顔をして食事をしています。給食の制度はとてもすばらしいものですが、やはり、お父さん、お母さんの作ってくれたお弁当にはかないません。
さて、このハートランチデーに、ちょっとした実験をしてみました。
空腹体験です。
方法は、「お弁当は、塩むすびに限定する。」「12時以降、下校時刻の4時までの間の好きな時におむすびを食べる。」です。
「歴史の勉強の中で、多くの時代、人々が飢えてきたのを知りました。
現在でも、日本以外の国で飢えている人が大勢いることも、みんなは知っています。
お腹がすくということがどういうことか、体験してみてほしいと思います」
そう投げかけ、希望者だけ、参加するように言いました。
楽しそうな顔で、みんなおむすびを用意してきました。
中には、朝ごはんも抜いてきたという子がいました。
朝食の重要性がことさら叫ばれている今ですから、おこられてしまうかもしれませんが、こうして意図的に朝食を抜かなければ、朝食の重要性はわからないのではないかと私は思います。
午前の授業が終わりました。
給食がないと、支度や片づけの時間をとられないので、昼の時間がたっぷりあるのに気づきます。
子どもたちのほとんどは、卒業文集作りなど、学級の仕事をして過ごしました。
外で遊ばないのかと意地悪く訊く私に、動くとお腹がすくと答えます。
どれだけ長く食べないでいられるか、という我慢比べになっています。
午後は体育で、偶然今日は、ハバネロの日です。
他の種目なら自分をコントロールして動きを抑えられますが、ハバネロだけは楽しくて、どの子も自然に体が動いてしまいます。
「自分は体調が悪いので、いつもどおり食べます」と12時に食べた子、昼休みに食べた子、体育の自分のゲームの合間に食べた子、下校時間まで待って食べた子、いろいろいましたが、感想はほぼ一致していました。
○最後までがまんしていたら、終わりごろ、やはりおなかがすいてきました。食べ物のない国の人の気持ちを考えたら、こんなに死ぬほどおなかがすくのが何日も続くのは大変なことだとわかりました。
○塩むすびがこんなにおいしいとは思わなかった。今、食べ物が足りなくて死にそうな国の人に食べ物をあげたら、どんなに喜ぶだろう。もう無駄に物を捨てるのはやめようと思う。
○おなかがすいた後のおにぎりは本当においしかったです。塩おにぎりはいつもなら食べる気がしないけど、私達は贅沢をしているのだと思いました。私は好き嫌いが多いけど、今までのことを見直したいと思いました。
○がまんしていて限界になってから食べたら、作ってくれたお母さんの味がしました。
○今日食べたおにぎりは、いつも食べる物よりおいしく感じた。塩とお米の味がよくわかった。私達にはいつでも食べ物があるけれど、空腹のままの人もいる。今はまだ何もできないけれど、We
are the worldを精一杯歌おうと思った。
お米は甘い、という体験をしないで大人になってほしくないといつも思います。
アウトドアが得意なご家族なら、これに似た体験をさせられるかもしれません。
もし、お試しでしたら、感想をお聞かせください。