大変なこと

 私の勤めていた学校では「歌の交歓会」という行事がありました。

年に数回、15分ほどの時間を使って、他の学年のクラスと、歌を聞き合ったり、いっしょに歌ったりします。

 2月の交歓会の相手は1年生です。

私のクラスは3年生です。

これまでは、上級生と行っていたので、こちらは、歌を練習して、上級生の教室に行くだけでよかったのですが、今回は初めて下級生を迎えて、プログラム作りから会の進行までやらなければいけません。

 3年生は大変緊張して当日を迎えました。

でも、緊張しているのは3年生ばかりではありません。

上級生の教室に入ってきた1年生も緊張の面持ちを隠せません。

 互いに1曲ずつ披露した後、秋に学習発表会で見せた『ここへおいで』を3年生が1年生に教えていっしょに歌い踊るコーナーになりました。

「1年生の近くに行ってあげなさい」と私が言いましたが、緊張している3年生の動きは素早くありません。

 そんな中、さっと動いて、1年生に声をかけたのが、A君、Bさんです。

A君、Bさんに声をかけられた1年生はぱっと笑顔にかわり、とてもやわらかな表情になりました。

A君、Bさんはえらいなあと、私は思いました。

自分も緊張している中で、相手の緊張をほぐしてやろうという行為は、大人でもなかなか難しいのではないでしょうか。

 A君、Bさんは、共に学級委員経験者です。

A君は前期の半年、Bさんは後期の半年、自分からやりたいと言い、学級委員としてがんばりました。

 私のクラスは、いつでもやりたい子だけが学級委員をやります。

希望者が多い場合はじゃんけん、くじ引きなどで決めます。

 A君は、2年生との合同遠足で全体の世話をしたり、学年のドッジボール大会を提案して実行しました。

Bさんは、児童会が提案した感謝のカードをクラス全員から集めて提出したり、クラスの音楽会の責任者にもなりました。

 どちらも、簡単にやってのけたわけではありません。

やりとげるまでにはいろいろ大変な出来事も起こり、とても苦労しました。

でも二人とも、弱音をはかずにやりとげました。

きっとそのやりとげた自信が、緊張した場面でもさっと動ける力を養っていったのだと思います。

 大変なことをやりとげると、文字通り、その人は大きく変わるのです。

子どもたちには、「大変なこと」は、「つらいこと」とは違う、と言ってあります。

お子さんには、毎日、「思い切ってやってみよう」と耳元でささやいてみませんか。


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