家事は身を助ける2 「お手伝い」から「家事を任せる」へ
一緒に家事をしたら、それをこれからも継続的に子どもがやってくれればいいですよね。
いろいろなことが子どもに身につき、手指も器用になり、脳の力も伸びる。
それに共稼ぎのお父さん、お母さんが家に帰ると、いろいろなことがすんでいてとても助かる。
よいことばかりです。
が、そうは問屋が卸しません。
一度くらい親と一緒に洗濯物をたたんでも、(たとえそれがどんなに楽しい時間だったとしても)、次の日から子どもが洗濯物を全部自主的に取り込んでたたんでしまっているなんていうことは、絶対おきません。
子どもにしっかりと、いわゆる「お手伝い」をさせるには、ある程度の期間とこつが必要です。
1 スキルを身につけさせる
仕事をするためには、それ相応の技術が必要です。
調理はもちろん、食器洗い、衣服管理、風呂掃除…。
どれも「やればできる」ものですが、短時間で上手にできる技術を持っているに越したことはありません。
また、基本を知っているからこそ、発展し、応用も生まれるのです。
基本技術を覚えるためには、師匠が必要です。
また、その技術を覚えるまでの期間が必要です。
お父さん、お母さんが師匠になり、お子さんができるようになるまで、じっくりと教えましょう。
基本技術が身につくまでは、師匠について家事の「お手伝い」をします。
小学校低学年の子は、それが楽しくてたまらないでしょう。
大好きなお父さん、お母さんといっしょに仕事をするのです。
できることがふえるし、うまくできれば大好きなお父さん、お母さんに誉められる。
最高の時間です。
2 独立させる
しかし、子どもは、いつまでも誉められて喜んでばかりいるわけではありません。
小学校の6年間は、幼児から大人に変わるくらい体も心も激変するのですから、今日のお子さんは、昨日のままの幼児ではないのです。
弟子が十分に力をつけたら、師匠はどうすればいいでしょう。
そうです。
暖簾分けして独立させるのです。
「お手伝い」を暖簾分けして独立させる、すなわち、家事を任せるということです。
いつまでも「お手伝い」では、人は育ちません。
いっしょに洗濯物をたたむ、から、洗って乾かし、タンスに整理して、しまう。
さらに、衣服の痛みをチェックして新しい物を購入する計画を立てる。
というように、衣類に関して完全に任せてしまいましょう。
一緒に皿洗いをする、から、食器棚の管理を任せる。
このように、食器のしまい方から、食器の廃棄・購入の計画をすべて任せましょう。
お料理好きなら、メニューを考え、買い物をし、作り、片付けるというように、日曜日の昼食を全部任せてみましょう。
風呂掃除をさせる、のではなく、風呂場全体を任せます。
いつも清潔にしておく、家族が気持ちよく入れるように工夫する、道具の管理をするという具合です。
こんなふうに、家事の「計画と実行」ができるように任せるのです。
・任せてもらったという自信が、次への意欲に繋がる。
・仕事の全体を見渡すという力が身につき、責任を持つという気構えが育つ。
・ひとつのことをいろいろな方面から見るので、いろいろな立場の人の気持ちがわかる。
・計画を立てるという行為の中で、創造的な力を伸ばすことができる。
と、このような効果が期待できます。
昔、5年生に「家でやっている仕事はなんですか」と聞いたら、「新聞を取りに行きます(郵便受けから新聞を出し、居間に持ってくる)」と胸をはって言った子がいます。
家から門まで何kmもある、どこかの国の大富豪のお屋敷なら、これも立派な仕事になるでしょうが、そうではないこの仕事のから彼が得るものは、手伝いをしているという自信だけです。
お父さん、お母さんは、お子さんの師匠です。
師匠としての目を持ってお子さんに向き合う時間も作れば、お子さんを褒める場面が倍増します。