行かなかった子ども達

 音楽交換会ということで、上海の子どものバンドが学校に来ました。

演奏会の前に、いっしょに給食を食べようという企画です。

 最初は緊張して、黙っていた子ども達も、「勇気ある」子をきっかけに、次第にうち解け、言葉はほとんど通じないものの、なごやかな食事の時間になりました。

 子どもはすぐにうち解ける、と、よく言いますが、それは間違いです。

子どもも大人も同じです。

突き抜けてくれる人がいるから、まわりの人もできるようになるのです。

 突き抜けてくれる人は、普段は、チームの役に立っていない、とか、逆にチームの邪魔になっているとチームメイトから思われている人も多いので、チームの中で人を育てるというのは、とても面白くて大事なことです。

 さて、上海の子ども達が体育館で演奏の準備をする時間になりました。

仲良くなった子ども達は、「体育館まで送ってくるよ」と楽しそうに、教室を出て行きました。

 上海の子がいなくなった教室には、食事の終わった状態のままのテーブル。

黙って見ていたら、教室に残った子達が、片付け始めました。

 いつもの2倍近い量の片付けです。

それを残った数人の子だけでやっています。

とても大変でした。

片付けをしているその姿に、とっても感動しました。

 「お祭り」があれば、大人でも、表の華やかな方で楽しみたいと思うでしょう。

裏を多くの人が支えて、その「お祭り」が出来上がっている、ということに気づかない大人も、最近はいるようです。

 体育館に行かなかった子ども達が、上海の子と仲良くなれなかったというわけではありません。

自分も行けるものなら、上海の子達と体育館に行きたかっただろうに、片付けの仕事があることに気づいたから、「表の楽しみ」から、「身を引いた」のです。

 行かなかった子は、「全体を見て」、今、何が起こっているのかを理解し、自分が何をすべきか判断する能力を、すでに身につけている、ということです。

素晴らしい子ども達だなあと、思います。

こういう子たちと、毎日過ごしていると思うと、私は本当に幸せです。

 この能力を子どもに身につけさせるには、一つの出来事の全体を見させるようにするといいと思います。

 もし、お子さんが「食前に、食器を並べるお手伝い」をしていたら、料理全体を見せてください。

手伝わせなくてもいいです。

買い物に行き、調理し、食卓を整え、食事が終わったら後片付けをする。

この「全体」を何度も経験(見るだけでも)すれば、お子さんは、楽しいことの裏に、いろいろなことがあることに感謝し、表で楽しむことと同じように、裏で支えることも、喜びだと感じられる人になるでしょう。


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