うれしいです
保護者面談は緊張しますか。
教員で慣れているはずの私でさえ、いざ自分の娘や息子の面談となると、毎回どきどきでした。
高学年になると、お母さんが面談に出かける前に、「今回はテスト悪かったから、覚悟して行ってね」などと「予防線」を張ってくる子もいて、多くのお母さんの顔が、いつもよりかたくなっています。
できるだけ、お父さん、お母さんにリラックスしてもらいたいのですが、私も話をするのが上手ではなく緊張してしまうので、いつも申し訳ないなあと思います。
Aさんのお母さんも、ちょっと緊張したような面持ちで、教室に入っていらっしゃいました。
ところが話が始まって、「この4ヶ月でAさんがこんなにがんばりましたよ」と伝えると、Aさんのお母さんは、にっこり笑って「うれしいです」とおっしゃいました。
その後も、学校でのできごとを私から話し、家での様子をお母さんから話してもらう間、お母さんから何度も「うれしいです」と言う言葉が何度も出てきました。
Aさんのお母さんは、Aさんのことを話す間ずっと楽しそうで、私もいつの間にか、幸せな気持ちになっていました。
Aさんは、とてもよい子です。
自分のためにも、人のためにも全力で努力し、クラスの約束「誰が見ていても同じことをする」をきちんと守っていることがわかります。
今回の面談で、お母さんと話をしてみて、Aさんがよい子でいる秘密がわかったような気がしました。
自分が生まれたこと、自分が生きていることを「うれしい」と思ってくれる人がいることを、Aさんは毎日肌で感じているのです。
これなら、いつだって、生きる希望がわいてきて、がんばろうという気持ちもわいてくるでしょう。
面談では、いいところばかりをお伝えするわけにもいきません。
ここが不足しているから、これから伸ばしてやりたい、と残念な部分についても話をしなければなりません。
そういう話をしたときも、Aさんのお母さんは「うちの子がそういう見方をしてもらっていて、ほんとうにうれしい」とおっしゃいました。
「うれしいです」は、「ありがとう」と違って、自分の気分を表すだけの言葉です。
でも、その言葉(気分)が伝わると、相手を幸せにしてしまうんですね。
Aさんのお母さんに、いいことを教わって、私もほんとうにうれしいです。