前髪で心の窓を隠す
ちょっとした悪戯があって、最初誰がやったのかわかりませんでした。
A君だろうと見当がついていたので、「君がやったのか」と訊いたら、やっていませんと答えました。
しばらく調べていくうちに事実が明らかになっていったので、改めてA君に尋ねると、「やりました」と答えました。
普通のやさしい先生や、よくドラマに出てくる先生は、「よく正直に言えたね」とにっこり笑って頭でも撫でるところですが、私は、厳しく叱りました。
「自分を守るためだけの嘘は、絶対についてはいけない」と教えてあるからです。
叱りながら、A君の前髪が、目を隠すくらい長くなっているのに気づきました。
理論的な根拠はありませんが、これは、危険な状態です。
前髪で目を隠すのは、自分の心をまっすぐ出せないという合図です。
心を外に向けるのが嫌になった子は、前髪が伸び始めたり、いつもは上げている前髪を下し始めます。
もし、そういう傾向が突然見られるようになったら、心の状態がこれまでと同じかどうか、ぜひ、確かめてください。
このことは、逆にも応用できます。
何か元気のないように見える日は、朝、しっかり前髪を上げるヘアスタイルにしてやってください。
それだけで、心は変わっていきます。男の子なら、思い切って坊主にしてしまいましょう。
耳の部分も重要です。勉強が楽しい、学校が楽しいと思っている子は、耳をいつもしっかりと出しています。
楽しいから、周りで起こることを「見たい」「聞きたい」と自分でも気づかぬうちに思っているのです。
お子さんの髪が長い場合は、毎朝、きちんと目と耳を出してやるだけで、1日の生活が明るくなります。
最初、うつむいて、こちらを見なかったA君は、叱られることに不本意な表情でした。
しかし、しっかりと前髪を上げさせ、目を合わせ始めたら、次第に表情がきりっとしてきて、もう絶対に自分を守るためだけの嘘はつかないと、しっかりした口調で言いました。
心につながる目と耳が、まっすぐ素直に「世界」に向けられたようです。
目と耳をしっかりと出すヘアスタイルをしている子は、落ち込みを長く引きずることはありません。
大人になると、前髪を上げるどころか、髪が少なすぎて、落ち込むことがあるのですけれど。