シンプル

 先日、社会科見学で、路線バスを利用しました。

子どもたちは、運転手さんにあいさつをし、後から乗ってくるお年寄りに進んで席を譲るというやさしさを発揮してくれました。

 ところが、おしゃべりに夢中で、バスの中がだんだん騒がしくなり、一人のお年寄りが、車内の案内を聞き逃し、あやうく目的のバス停に降りられなくなりそうになる、という事件が起きました。

 幸い、バス停通過寸前のところで気づいたお年寄りがボタンを押し、目的のバス停で降りられたのですが、ほとんどの子どもたちはそれにも気づきませんでした。

 子どもたちにどんな話をすればよいと思いますか。

様々な場面を想定して指導してくればよかったのだ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

 たしかにそれを延々と積み重ねれば、よい行動がよりたくさんできる人間に育つでしょう。

でも、教わったことのみしかできない人になるおそれがあります。

 実際、あいさつや席を譲ることは教わっていたけれど、大きな声でおしゃべりをすると降りそこなう人が出てくるとは教わっていなかったので、できなかったのです。

 公共の場での行動の仕方の指導が足りなかったのだ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

 たしかに公共の場で必要な事項はいくつもあります。

でも、それも闇雲にケースごとに教えるのでは、これも「もぐらたたき」になりかねません。

 私たち教員は、大事なことを、どんな場面でも、教わったことを応用して実行できる人を育てたいと願っています。

 私は、長い間、「人も自分も幸せになる」「誰が見ていても同じ事をする」「自分から始める」という3つの約束を、すべてのことに当てはめて考え行動するように、子どもたちに言って来ました。

 でも、いつももっと単純にならないか、と考えています。

単純であればあるほど、心の中にしまいやすいからです。

 今回、この事件について子どもたちに話をする上で、「その場の全員が満たされる」ように行動しよう、と言いました。

 「せっかく友達とバスに乗る楽しい時間だから、おしゃべりはとてもいい。

ただ、周りの人も楽しい気持ちになるような声やないようにするべきだ。

乗り合いバスの時は、他の人のおしゃべりの邪魔にならない大きさで話そう。

貸し切りバスのときは、バスガイドさんや運転手さんも楽しんでくれるような内容を話そう。」

 この「その場の全員が満たされる」がどこまで深く人の行動に応用できるか、これから使いながら実証していこうと思います。

 多くの人は、「親から○○と言われて育った。それだけは忘れない」という大事な言葉を持って生きています。

人生を支える大切なことは、どの人に聞いてもとてもシンプルです。

 この言葉を支えに生きてきた、という言葉を、ぜひ、教えてください。

みなさんと、子どもたちをもっとよい子に育てる、シンプルな理論を探したいと思います。


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