ルールは、みんなのためのもの
冬休みを前に、交通ルールを守りましょう、などと、ルールの話を子どもたちにする機会が増えてきます。
世の中には、ルールが数えきれないほどあります。
その上、日本では、すべてのルールをきちんと守らなければ、生きていけないと言っても過言ではありません。
そこで、あせってしまう大人は、子どもたちにルールを守らせようと必死になってしまいます。
そうしているうちに、子どもたちは、ルールから逃げたり、はずれたりすることを「自由」という名前で呼ぶようになります。
本当の自由とは、「責任を取る」ということなのに、それを間違えて理解してしまいます。
では、子どもたちのルール違反を大目に見ればよいか、というと、もちろん、そうではありません。
やはりルールは、きちんと守らせなければいけません。
闇雲にルールを守らせるのではなく、ルールを守らせる時に、年齢別に少しだけ工夫すると、子どもはルールとは何かを理解し、ルールを大切にする大人になります。
0歳から6歳までは、問答無用でルールを守らせてください。
ひとつ気を付けたいのは、守らせる時、親の人生訓や子育ての目標に、そのルールをシンプルにつなげることです。
例えば、「人に迷惑をかけない人になってほしい」という願いを持っているのでしたら、いつでも、「人に迷惑をかけないように、○○というルールは守らなければいけません」と言ってください。
まだ、言葉がよくわからない年齢でも、きちんと言い続けてください。
ルールに結びつける(「人に迷惑をかけない」というような)事柄は、ひとつに絞るのがベストです。
6歳から10歳は、「このルールを守ると、たくさんの人が幸せになる」と言って、ルールを守らせてください。
時には、「ここ(図書館)で、大声をあげてはいけません。
君が静かにしていると、あの人も、この人も、しっかり読書ができるから、みんな幸せになれるんだよ」
と、現場で具体的に話してください。
10歳以降は、「ルールというのは、もともとあったものではなく、みんなが幸せになるために、人間が作ったものだ」と教えてください。
ルールというのは、誰かから与えられた鎖ではなく、自分を含めたみんなが幸せになるための道具だという意識を持たせることが重要です。
そのために、学校では、「ルールは創るもの」ということを、生活の中で学ばせます。
数限りないルールで縛られている今の暮らしの中で、ルールが「天からの授かりもの」だと子供に思い込ませると、子どもは苦しくなった時に、ルールを破るしか、生きる方法を見いだせなくなります。
ただ、先ほど書いたように、親が絶対に守らせたいルールは、10歳までに体に染み込ませなくてはいけません。
6歳までは、有無を言わさず、きちんと教え込み、6歳から10歳までは、「ルールはみんなの幸せのためにある」ことをルール遵守とともに教えるのか効果的ですが、いずれにせよ、親の言うことに黙って従うのは、ここまでです。
10歳以後は、ルールについて自分で考えるようになり、時には、理由もなく、窮屈なルールを破りたくなる衝動にかられることも出てきます。
そこで大事なのは、
ルールは、
天からの授かりものではなく、人が人のために作ったものであること、
おかしいと思ったルールは破るのではなく、変えたり創り直したりしていくものであること
を、少しずつ教えていくことです。
もちろん、実際の人生では、ルールを変えたりルールを創ったりすることは、途轍もなく大変なことです。
だからといって、アウトローになったり、盲目的に遵守するだけでは、「人を幸せにする幸せな人生」を送ることはできません。
また、世の中には、その気になれば、みんなの幸せのために変えたり創ったりできる小さなルールはたくさんあります。
私は、小学校3年生の指導くらいから、ルールを創るという活動を、いつも少しずつ取り入れてきました。
クラスで必要なルールは、みんなで創ったもの、という気持ちを持たせるためです。
授業でも、体育などは、ルール作りのチャンスです。
どの子も、全力で楽しんでくれるボールゲーム「ハバネロ」は、毎年、ルール改正があります。
今年4年生の体育係は、「コーンにあてたボールを相手がノーバウンドで取ったら、そのゴールを無効にしたい」と提案してきました。
「そんな場面って起こりうるのかなあ」と私は思いましたが、よく見ていると、3試合に1回くらいは、それが起こっていることがわかりました。
「先輩たち」がルールを積み上げてきたハバネロに、自分たちも一つルールをつけ加えられたことに、体育係長は満面の笑みを浮かべて喜んでいました。
このスポーツの最も大事なルールを言い忘れました。
最も大事なルールは、「うまい子も下手な子も、みんなが楽しくできること」です。
お家では、どんなルールがありますか。
お父さん、お母さんが、「この子が生きていくためにどうしても必要」だと思えるルールは、有無を言わさず、心に教え込んでください。
そうではない小さなルールは、「家族国会」を開いて決めてみませんか。