イメージしながら聞く、ほめるのは難しい

6年生女子Aさんの作文********************

 先生は火曜日に、叱られるということは、その人に期待されているからで、喜ばれるのも、その人に期待されているということだとおっしゃっていましたが、私は、その時、あの人に叱られたということは、期待されているからなんだなと思いながら聞いていました。

 たとえば、テストでの点が悪かった時に、いつも母に叱られます。

私は今まで、とてもそれが嫌で、テストを見せたくありませんでした。

でも、先生の話を聞いて、母は私に期待しているんだ、期待に応えなくては、と、もっと勉強をがんばろうと思いました。

 他にも、習い事の先生に、いろいろなことで叱られます。

でも、それは、私に期待してくれているのだから、素直に受け入れようと思いました。

私の近くには、私に期待してくれている人がいるのだと思いました。

 私は火曜日の先生の話を聞いて、私に期待してくれている人がいることに気づき、その人の期待に応えるためにがんばろうと思うことができました。

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 子ども達は、いろいろな人から、同様の話を何度も聞いていると思います。

同じ話でも、心に引っかかる時と、スルーしてしまう時があるのは、大人も同じです。

 心に引っかかる場合というのは、いろいろあります。

 ものすごくびっくりする、悩んでいた問題にぴったりである、大好きな人から聞く、…Aさんが今回、この話が心に留まったのは、Aさんが、叱られている場面をリアルにイメージしながら、私の話をきいていたからだと思います。

 漢字をイメージしながら聞くと、話の内容がよくわかる、という技術がありますが、話をさらに深く理解するには、この時のAさんのように、具体的な場面をイメージしながら聞くことが重要です。

 心にリアルな映像を描く力をつけるには、

・空気感を伴って、実際の場面を経験する

・読書をする時に、ゆっくりイメージをふくらませる

という方法が有効です。テレビやテレビゲームの画面からは、この能力は身に付きません。

読者の方のお便り*************************

Aさん、すばらしいですね。上司が部下を「叱る」も同じです。

Aさんのように前向きな考えの部下の成長は早いです

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 子どもも大人も、叱られるのはつらいですが、子どものうちに叱られる本当の意味を知り、上手に叱られることができるようになっていると、その先も、役立ちそうですね。

 Aさんは、私の話から、叱られることの価値を見つけてくれました。

でも、実は、その話の中でもう一つ、子ども達に知っておいてほしいことがありました。

それは、「12才は、もう褒められる年齢ではない」ということです。

 最近、「褒めて伸ばす」のが大事だと言われるようになりました。

 テレビ番組を見ていたら、街頭でインタビューをされたサラリーマンが、「部下を褒めたいと思うのだけれど、褒めるのは難しくて、なかなかうまくできません」と話しています。

この人は、こんなことで悩んでいるのか、大変だなあと、その時、思いました。

もともと、上司が部下を褒める、というのは、ほとんど無理なことだと思うからです。

 「褒める」には、もちろん、人を伸ばす効果があります。

 でも、それは、褒める人と褒められる人の間に、圧倒的に力の差がある場合に限ります。

大人と子ども、将軍と一兵卒、あこがれのスターと熱烈なファン…、このような関係の場合は、「よくやった」、「よくできた」という褒め言葉は、人を伸ばす強力な栄養剤になるでしょう。

 でも、これほどの差がない大人どうしの関係では、「よくやった」とも言いにくいし、「よくやった」と言われても、それほど心も動かないでしょう。

子ども達は小さな頃、褒められて大きくなってきました。

だから、いつまでも、昔のように褒められるものと思っています。

でも、6年生、12才は、すでに大人のメンタリティを持っているし、親と対等な口をきくこともある年齢です。

 ある時は、親と対等に口げんかをするくせに、自分の都合のよい時だけ、小さな子どものように褒められたいなんて、虫が良すぎます。

だから、もう、親は君たちを褒めてはくれない、褒められることを期待するな、という話をしました。

この話の意味を理解した何人かの子は、すこしがっかりしたようです。

 大事なのはここからです。その後、こんなふうに話を結びました。

 「では、お父さん、お母さんは、君たちがいくらがんばっても認めてくれないのか、というと、そうではない。昔のように、褒める言葉を言ってはくれなくても、君ががんばったのがわかった時は、いっしょに喜んでくれるはずだ。

 それは、100点のテストを渡した時の、お父さんやお母さんの顔を見ていれば、よくわかる。

きっと、うれしそうな顔をしているはず。

ここから先は、褒められることに幸せを感じる以上に、いっしょに喜んでくれる人がいることを幸せだと思える人間にシフトしていきなさい。」

 大きくなった子どもに対して、親は褒めようと努力する必要はありません。

心のままに、子どもの成長を喜び、それを顔に出せば、子どもは伸びていきます。

読者の方のお便り*************************

ほっとしました。ほめなきゃいけないほめなきゃいけないってずっと思ってました。

でも中一の息子に褒める言葉も見つからないし、たまに褒めても嬉しそうでないし。納得がいきました。

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 子育てに、難しい理論はいりません。お父さん、お母さんが「この子が生まれて、自分は本当に幸せだ」と思っているだけでいいのだと思います。


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