もし…だったら

 「もし…だったら」という口癖の子がいました。

 「○○をしよう」と誰かが言うと、「もし、できなかったら、どうする」と必ず一言言うのです。

彼は必ず否定の未来からイメージしました。

話の腰を折られたような気がして、周りの子はいつも嫌な気持ちになりました。

周りの子からは、「ひねくれた子」と見られていたかもしれません。

 不思議なのは、本人がそれをわかっていて、直したいと思っていることでした。

直したいのなら直せばいいのに、と思ってしまいがちですが、本人にもどうしようもないくらい体にしみこんでしまっていたようです。

 まだ直せるチャンスがあると思い、厳しい指導に切り替えました。

そして数ヶ月、とうとう「もし…だったら」ではない言葉が出てきました。

 彼は前月に続けて、宿題をサボっていることを隠し続けました。

 宿題は毎日私が見ますが、日ごとにやってあるかどうかはチェックしません。

時にはやれない日もあるだろうから、そういう日は次の日にそ〜っと2日分出せるように、日数分をやってきたかどうかのチェックは1ヶ月に1度にしています。

 来月は必ずやってきます、という彼に、「先月同じように誓ったのに嘘だった。もう信じない」と私は言いました。

 すると彼はいつものように「もしできなかったら、こういう罰を自分で与えます」と言いました。

そんな考え方だから、君は何もできないのだと私は冷たく言い放ちました。

 彼は涙を浮かべて自分の席に戻っていきます。

 いつもならここで終わるのですが、この日は違いました。

 「来月は必ずできるように、家の中のあちこちに宿題をするという紙を貼ります。それから…」

 初めて彼の口から、「もしできなかったら」ではなく、やりとげるための工夫、アイデアが出てきたのです。

 これをていねいにしばらく重ねていけば、彼は変わると感じました。

もともと人の役に立つ力の持っている子ですから、友達からの信頼も厚くなっていくでしょう。

 否定の未来を想像することから、彼はすべてを失っていたように思えます。

見つめる未来はいつも肯定的なものにしよう、と私自身も深く思いました。


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