先生、色を塗りますか
国語の授業で、自分の気に入った物語を1枚のリーフレットで紹介しようという学習をしました。
子どもたちは熱心に取り組み、一人で2枚も3枚も作る子が出てきました。
1枚できるたびに、私のところに提出します。
Aさんが、「できました」と言って、持ってきました。
すでに提出してある作品の上に出そうとしたAさんの手が止まりました。
友達のリーフレットに描かれたイラストには、みんなきれいに色が塗ってあったのに、Aさんのイラストには色が塗ってはありませんでした。
「先生、色を塗りますか」とAさんが聞きます。
そこで、「君が色を塗りたいなら、色を塗ってきていいですか、塗りたくないなら、塗らなくてもいいですか、と言えばいいんだよ」と私が言いました。
Aさんは黙っています。
「君は色を塗りたいの?塗りたくないの?」と聞くと、Aさんは今度はさっと答えました。
「わかりません」
これは、とても重要で、心配なことです。
子どもたちが質問する時には、意志があるように思われがちですが、実は、こんなふうに自分の行動を人任せにしていることがとても多いのです。
もし、このまま大人になってしまったら、この子たちは、自分の意思がなく(本人は持っているつもりで)、他人に都合のよいだけの人間になってしまうでしょう。
自分で判断をしないことが「普通」になってしまったら、自分の人生がむなしいことにすら気づかない人間になってしまいます。(いっそ、その方が幸せでしょうか。)
こうなってしまう原因はいろいろ考えられるのですが、身近なところでは、大人が急ぎすぎることに大きな原因があるような気がします。
子どもが何かを言いかけると、言い終わらないうちに、その意を汲んで、あとの言葉を引き取ってしまうことはないでしょうか。
もし、Aさんの「先生、色を塗りますか」に、私が問い直すことをせずに、「塗りましょう」とか「そのままでいいよ」と答えていたら、Aさんに意志がなかったことはわからないままだったと思います。
お子さんが何かを質問してきたら、「自分はどうしたいの?」とじっくり聞いてみてください。
何度もそれを繰り返すことで、明確に意志を持てるようになっていくと思います。
読者の方から*********************
親のちょっとした関わり方の違いで、まっさらな子供は大きく変化するのですね。
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そうですね。でも、
それで、親が子供にかかわることを恐れては何にもなりません。
親がまず気を付けなければいけないのは、親自身が幸せでいることです。
幸せな親に接している子は、幸せに育ちます。
お父さん、お母さんは、細かい子育て情報は気にせずに、ご自身が幸せであることに自信を持ってお子さんを育ててください。