力尽きるまで
保護者面談で、6年生のお母さんから、こんなご相談をいただきました。
「毎日、宿題をしっかり見ています。夏休みも、つきっきりでやらせようと思います。
でも、来年から中学生だと思うと、こんな状態でいいのか悩みます。
子どもの友達の話では、もう、自分で進んで勉強に取り組む子も多いようです。
うちの子も、自分で進んで取り組むよう、私は子どもから離れたほうがよいでしょうか。」
私の答えです。
「お母さんに、やる気があるなら、今まで通り、ぴったりくっついて、勉強を徹底的にや らせてください。
これまで、嫌々勉強をやっていた子が、お母さんが離れたからといって、急に、自分で勉強を始めるようになるはずがありません。
今、お母さんが離れたら、 これ幸いと勉強をさぼり、実力が落ちるのは目に見えています。
お子さんの様子には、 お構いなく、お母さんが力尽きるまで、ぴったり離れずに、びっしり勉強させてくださ い。
心配しなくても、お母さんが力尽きる日は、やがて、やってきます。
そうなったら、もう、一生、お子さんの勉強の面倒を見るという体験は、できません。
どうぞ、思う存分、 自分の子の世話ができるという幸せを味わい尽くしてください。」
自分にまだ子どもがいなかった若い頃は、「そろそろ、乳離れの時期です」などと、お母さんたちにアドバイスしていた時期もありましたが、今の考えは、上記のとおりです。
自分の子の世話ができる時期は、人生の長さを考えると、ほんのひと時です。
思ったとおりに、お子さんの世話をしてください。
ただし、気を付けることがひとつ。それは、「自分が力尽きたら、やめる」ことです。
自分が、これ以上できない、大変だと思った時は、さっと手を引いて、その日から勉強の世話はやめましょう。
お子さんが、「何が起こったんだ」とびっくりして、不安になるくらい、急にやめるのが、こつです。
自分が力尽きているのに、子どもに教えても、無駄です。
すっぱり、それまでのスタイルを捨ててください。
残念なことに、それができないお母さんや、御自身が力尽きたことに気づかないお母さんも、たくさんいるようです。
それを回避するには、お父さんが頼りです。(お父さんが頑張っている場合は、もちろん、お母さんが頼りです。)
「私、まだ、力尽きていないかしら」と、時々、お父さんに訊ねてください。
お父さんから「大変そうに見えるよ」の一言があったら、即、引退です。
ほとんどの野性の哺乳類は、子育てに失敗しません。
変な理論に基づくのではなく、体が感じる自然の摂理に基づいて、子育てをしているからです。
一般論に振り回された子育てをしては失敗します。
子どもに温かなまなざしを注ぎ続けることは大事ですが、お父さん、お母さん自身が無理をしていないかを自分の心と体に訊ねながら、力尽きるまで自信をもって進めてください。