今日のいちばん
朝の会の中に「幸せと感謝」というコーナーがあります。
どこかの会社がやっているのをまねさせてもらっています。
この24時間に起こった幸せなできごとや、感謝したくなるできごとを、みんなの前で言うコーナーです。
「朝ごはんがおいしかったです」のように、どんな小さなことでも、自分が幸せになったことを言えばいいのですが、最近では「6年生が、みんなのためにプールを掃除してくれたので、6年生に感謝します」と広い目と心で、自分の周りを見ることのできる子が増えてきました。
中には、何も思いつかなくて「今日の体育が楽しみです」などと、ごまかしてしまう子もいます。
でも、幸せなら、それでいいです。
全員が言い終わった後、日直当番が、「今日のいちばん」を決めて、黒板に書いておくことになっています。
最初の頃は、どれを選んでいいかわからなかった子どもたちも、最近では、先ほどの「6年生…」のような、広い見方をしている子の「幸せと感謝」を今日のいちばんに選ぶようになってきました。
ところが先週、今日のいちばんの黒板に「今日の体育が楽しみです」と書いてありました。
「せっかく、いいものを選べるようになってきたのに…」と私は思い、「帰りの会で、日直に文句を言ってやろう」と考えました。
ところがその黒板をよく見ると、「今日の体育が楽しみです」の下に(Aさん)と書いてありました。
それは、Aさんが言った「幸せと感謝」という意味です。
実は、その日は、転校していくAさんが、このクラスにいる最後の日でした。
Aさんは、毎週、体育のハバネロを楽しみにしていたのです。
日直のBさんも、本当は、「6年生が、みんなのためにプールを掃除してくれたので、6年生に感謝します」というようなものを黒板に書いた方が、良いものを選んだと先生から言われるだろうと思っていたはずです。
これを思い切って書いたBさんは、ほんとうにいい人だなあと私は思いました。
Bさんが、これを書いたことが、私の、その日の幸せと感謝、今日のいちばんになりました。