長縄跳びで背中を押す
長縄跳びで、8の字跳び大会というのが、校内で行われます。どのクラスも、その練習に熱心です。
Aさんは、前の人に続けて飛ぶことができませんでした。
必ず1回見送ってから跳ぶので、チームの合計回数は、その分、減ってしまいます。
「誰かが背中を押してやれば入るタイミングがわかって跳べるようになるかも」という声に、B君が「やるよ」と手を挙げました。
驚いたことに、10分も経たないうちに、B君の「どん」と押す力で、Aさんは1回見送らなくても、前の人に続けて跳ぶようになりました。
さらに驚いたことに、20分後には、B君が軽く肩に手を触れるだけで、タイミングがわかり跳べるようになりました。
多分、一番驚いたのは、Aさん自身でしょう。
まさか自分が、みんなと同じように跳べるようになるとは夢にも思っていなかったはずです。
長縄跳びで前の人に続けて跳べる。些細なことだと思われるでしょうが、Aさんは人生のどこかで、これができることで、すごくよい思いをする場面が必ず出てくるはずです。
たとえ、そういう場面が来なくても、この20分で身につけた自信は、Aさんの人生を少しずつ変えてゆくでしょう。
B君にとって、Aさんの背中を押してやることは、さほど大変な、特別なことではありませんでした。
でも、それを買って出て、やってあげることで、B君は、一人の人を、とても幸せにすることができました。
人間は、たとえ、周りの人より飛び抜けてできるものがなくても、目の前に事に真面目に取り組んでいれば、必ず、人を幸せにするチャンスが来ます。
でも、それは、多くの人と毎日接していなければ、なかなか見つからないものです。
毎年、いろいろな人と同じ部屋で、いっしょに過ごし、勉強し、遊んだり活動したりする。
こうして学校に通っているからこそ、こういうチャンスがたくさんできます。
そういうチャンスがあることに気づくことが、学校に来て、クラスで学習する最も大きな理由のひとつだと私は考えています。
一番になれるものが、なかなか見つからなくても、落ち込む必要はないのです。
子ども時代は、真面目にさえやっていれば、誰でも必ず進歩し力をつけます。
そして、毎日まじめに学校で多くの人と接していれば、自分の力を生かすチャンスがあることがわかり、精神的にも経済的にも豊かな人生を送る準備ができるのですから。
読者の方からのお便り******
親としてだけでなく、職業的にも参考になります。
ほほえましく読ませていただきました。
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子ども達に話す時も、今すぐ役立つことばかりでなく、人生のいちばん大事な時に役立つことがあればいいなあといつも考えています。