わるものの仲間入りだね

 A君とB君がずるいことをしました。

それがわかったのが、音楽の授業の途中だったので、他の子にはグループ練習をさせ、二人を叱りました。

 二人は泣きながら、「これからよい人間になります」と言いました。

 音楽の授業が終わる時間になっても二人は泣いていました。

 次の授業が始まる時刻、私が職員室から教室に戻ると、C君が、A君とB君の肩をたたきながら、にこにこして、「お〜、君たちも、僕と一緒のわるものの仲間入りだね」と言っていました。

それを見ていて、C君の成長ぶりに、思わず笑ってしまいました。

 C君は、数か月前、私に叱られました。

間の悪いことに、いくつかの「まずいこと」が連日見つかってしまい、C君は、2日間叱られ続けました。

 泣きながら、声にもならない声で、「僕はこれから絶対よい人になります」というC君は、翌日から学校へ来ないのではないかと思ったほど、しょげていました。

 でも、C君は、それからも元気に学校に来て、自分で言ったことを実行しはじめました。

自分にできる「良いこと」とは何かを探し、それを実際にやりはじめたのです。

 いろいろなところから、C君がこんなことをしてくれた、C君が見違えるように変わった、という声を聞くようになりました。

彼が変わっていくのが、私の目からも感じ取れました。

それは、ずっと続いています。

 A君、B君が叱られた時、先生に叱られた後は誰かが元気になるきっかけを作ってやらなければいけない、ということを、C君は自分の経験から、わかっていました。

そのきっかけが、「大丈夫?」などという「まじめ」な声かけより、おちゃらけた言葉の方が、何倍も威力があることも、C君は経験から学んでいたのだと思います。

それが、「お〜、君たちも、僕と一緒のわるものの仲間入りだね」です。

 A君とB君は、C君の言葉に、にっこり笑いました。

どうなることかと心配していた様子の周りの子達も、いっしょに笑っていました。そして、A君とB君は、いつもどおり授業を受けました。

 叱られてもけろっとしている、とは違います。

A君とB君は、反省して、そして、元気になったのです。

 自分の失敗を栄養に変えて、一回り大きく自分を成長させたC君は、将来、多くの人を救う仕事をするかもしれない、と、その時、私は思いました。

 後にわかったことですが、C君は、叱られた時に多くの友達に声をかけてもらって元気になったようです。


 『速効よい子』へ戻る   ホームページ『季節の小箱』へ戻る