A君のマイナスが
A君を初めて担任したのは、3年生の時です。
A君は、授業中、好き勝手に話す子でした。
といっても、話す内容は、授業に関係あること。
授業の内容はしっかり聞いています。
ただ、自分が思いついたことは何でも話したいので、一応挙手はするものの、指名されないと勝手に話し始めるのです。
大きな声なので、放っておくと他の子が発言できません。
それで、私は、何度も「黙りなさい」と叱ったおぼえがあります。A君のマイナス面を直したいと思いました。
そんなA君も今年は6年生、偶然にも、また私のクラスになりました。
4月に再会して、あれ、A君、少し変わったかな、と思いました。
そのうち、何が変わったかが、わかってきました。
授業中、元気に発言することは変わりないのですが、A君は、きちんとルールの中で話をするようになっていたのです。
それどころか、日頃発言しない人が挙手すると、その子に発言をゆずります。
英語の新しい先生が来た初日、先生の挨拶のあと、クラス全体が静かになってしまった時、A君が後ろの席から「よろしくお願いします」と声をかけてくれたおかげで、他の子も元気に挨拶ができ、英語の先生にとても褒められました。
A君の話す力は、自分の力を伸ばすだけでなく、友だちを助ける力にもなっていました。
授業中に勝手にしゃべっていたのは、A君のマイナス面でした。
「黙りなさい」と言った私は、A君のマイナス面を0にしようとしました。
でも、昨年の担任の先生は、A君のマイナス面に含まれる力を上手に生かしてプラスに変えたのです。
人の弱点というのは、よく見ると、大きなパワーとか可能性を含んでいることが多いようです。
マイナスを、0ではなく、プラスに変えた昨年の担任の先生とA君自身に、改めてそれを教わりました。
お子さんの長所はどこですか。お子さんの弱点はどこですか。
弱点だと思っていたことが、もしかしたら、ほんの少し支援することで、大きな長所に変わるのかもしれない。
お父さん、お母さんから、そんな気持ちで見つめられたら、お子さんは幸せです。