選んで褒める
子どもの進歩は本当にすごいですね。
3月に、1年前の4月のものを比べてみると、その進歩に驚かされます。
でも、「驚くほど」違いがわかるのも4年生くらいまでです。
さて、5年生以上で進歩が見えにくくなったらどうしましょう。
10歳までは、とにかく何でもかんでも褒めれば、効果は十分に出てきます。
10歳を越えても、褒めることがあれば褒める、のが基本です。
でも、10歳を越えたら、心の成長や未来のことを考えて、これまでの褒め方に少し手を加えてみましょう。
いちばんよいと私が思うのは、「がんばったことが成果につながったもの」を褒めることです。
10歳から先は、ただ生きているだけでは、なかなか脳も進化しません。
ここからは、努力や積み重ねが加味されて、力は伸びていきます。
ですから、褒められたことが、この先、自分で努力するということと結びつけば、力は伸び続けます。
例えば、
漢字の勉強を頑張ってきたので、漢字テストの点数が上がった
計算ドリルをたくさんやったから、計算が速くなった
鉄棒の練習をしたから、逆上がりができるようになった
という具合です。
自分がやったから良い結果が出た、ということが心の中に積み重なれば、その後もいろいろなことに挑戦しようという気持ちになります。
10歳以降は、自分でやったことだけが能力として身につくと思わせましょう。
中でも、「毎日コツコツやった」「今まで以上に長く続けた」ことが良い成果につながったことを褒めるのは効果が大きいと思います。
年齢を重ねるほどに、成功するまでに時間がかかるようになるので、こつこつと長く続けることは、年をとればとるほど、より重要になるからです。
さて、では、漢字の練習を毎日がんばって、ある日、たまたま山を張ったところが出て満点をとれた時は、褒めてもよいでしょうか。
昔は、山をはったのが当たった、というのは褒める材料ではありませんでしたが、私は、これこそ思い切り褒めたほうがよいと、最近思うようになりました。
山を張れるようになったのは、これまでに、それなりの勉強をしてきたからです。
その山が当たったのは、勉強の成果であるとともに、運の良さでもあります。
運がよいというのは人任せのように思われますが、人知を越えた力に守られていると思うことは、やる気を継続させるための大きな力になるのです。
「自分はもともと幸運の元に生まれている。がんばるとさらに幸運が訪れる」と思い込むのは、人生の最強の力になります。
さらに、この世界に生まれてきたこと、そのものに自信を持てるようになります。
この自信こそ、「やり遂げる力」の源です。
「自分は、このお父さんとお母さんの間に生まれてきたから運がいいのだ」なんて、思ってくれるかもしれません。
何度も書いていますが、10歳の誕生日に、すべての子が変わるわけではありません。
いつ変わるのか、その日は、一人一人違います。
でも、9歳から小学校を卒業する間までに、ほとんどの子は、その日を迎えます。
少しだけ、お子さんをよく見ていてください。
「その日」は、意外に、はっきりわかると思います。