番組を録画して見る

 下の子ができた頃、いつの間にか、テレビが上の子の子守り代わりになっていた、と、昔、聞いたことがあります。

しかし、テレビやネット動画は、子どもだけで見ては、ただの毒でしかありません。

大人の楽しみであるお酒を子どもに飲ませるのと同じだ、くらいに思っていた方がよいと思います。

 とはいえ、テレビは素晴らしい発明であり、子どもに見せたい良い番組も沢山あります。

 テレビは人類が誇る最高の発明の一つです。

最もよいところは、一生見ることのできないと思われるものや場所を見ることができるところです。

たった数万人しか体験することができないはずのワールドカップの決勝戦を、テレビのおかげで何億もの人が、同じ時間にスタジアム観戦を疑似体験できるのです。

 テレビは本当に素晴らしい道具です。

そうです。

テレビは道具なのです。道具はしっかりと使いこなせば、人生や生活を豊かにするものです。

でも使いこなせなければただの物体です。

さらに、使い方を間違えると、人生を壊す毒になります。

その道具が、便利であればあるほど、その危険性は強いでしょう。

例えば包丁、マッチ、よく効く薬、原子力発電…。

どれも、人間を助ける道具であると同時に、人類を滅ぼす道具でもあります。

 そこで、クラスの子ども達には、家の人に頼んで録画してもらい、後で家の人と一緒に見ようと言ってあります。

 録画したものを見ると、よいことが3つあります。

 一つ目は、好きな時間に見られることです。

生中継でしか味わえない面白さもありますが、最近、多くの場合は同時中継を見なくてもよい番組なので、録画して見れば、生活の時間をテレビに合わせ必要はありません。

また、見なくてもよい場面をカットすれば時間節約にもなります。

 二つ目は、見たい場面を何度も見られることです。

これによって、読書のように、自分がわかるまで、次の場面に進まない、という選択ができます。

 本は自分の考える力のペースに合わせて次のページを自分で開きます。

でも、テレビ番組は、自分の脳の都合とは関係なく、どんどん先に行ってしまいます。

そんな時、テレビから送られる情報は膨大ですが、子どもがそこから得られる情報はほんの少しです。

 それどころか、情報を受け取れないまま時間を過ごすと、脳は停止します。

言葉の通じない外国に自分がいると想像してください。

最初は、相手の話すことの意味を考えようと必死になりますが、あまりにわからない情報が多いと脳があきらめるのは想像できると思います。

テレビやネット動画を見ているすべての子どもの脳の中で、それと同じことが起こっています。

子どもがテレビを見る、テレビゲームをするということは、無駄な時間を使うばかりか、脳を停止させる習慣をつけてしまうことなのです。

 そこで、テレビは必ず大人と見ることが大事になります。

見ながらでもいいし、見た後でもいいので、必ずその番組についておしゃべりをする。

そうすることで、子どもが見たものは、脳の箱の中にしっかりと入ります。

 おじいさん、おばあさんと見る「水戸黄門」は、とてもよいと思います。

どうしてあの人はこらしめられたの、から始まり、「この紋所」って何、「さきのふくしょうぐん」の「さき」って何のこと、…。大人と見れば、どんな番組も、知識と知恵の宝庫なのです。

 よく、子どもに良くない番組だと非難の声を上げる人がいますが、これは、親に力がないということを親自身が認めているということになります。

必ず録画してから見るという習慣によって、親が番組を選択することができます。

テレビによって子どもが壊れていくのは、番組のせいではありません。

見なければ、その番組は存在しないに等しいからです。

親が悪いと思う番組は絶対子どもに見せない、という強さがなければ、子どもは正しく育ちません。

 三つ目は、「見ない」ことです。

録画後、何日かして、見る気が失せている番組は、もともと見なくてもよかった番組だということになります。

何日経っても、見たくてたまらない番組は、その人にとって見る価値のあるものです。

読者の方の感想*********

確かにテレビは毒ですよねぇ。

ただ、私の会社の社員のひとりに、自分の子供に全くテレビを見せない人がいますが、変人扱いされています。

これが日本の現実でしょうか?

*************************

 テレビを見ない日本人は○パーセントいますという話は、テレビ番組では、なかなか出てきません。

その数字は、テレビが自分で自分の首を絞めることになるからです。

ですから、テレビを見る習慣を持っている限り、日本の中に、どれほどテレビを見ない人がいるかを知ることはできません。

 テレビ禁止令

1 子どもはテレビやテレビのリモコン、ゲーム機を勝手にさわってはいけない。

2 もちろん、子どもだけでテレビを見たり、テレビゲームをしてはいけない。

3 子どもは、親の許可がある時のみ、大人と一緒になら、テレビを見たりテレビゲームをしてよい。

 こういうテレビ禁止令をクラスで出しても、全く関係ない子がいます。

その多くは、「そんなことは絶対無理」と言う子ですが、中には、逆に、うちはテレビを見ないから関係ないという子もいます。

 大事なのは、テレビもコンピュータもスマホも、みんな道具である、という観念を12歳までにしっかりと植え付けることです。


 『速効よい子』へ戻る   ホームページ『季節の小箱』へ戻る