子どもは退屈が嫌いだから
読者の方からの御質問*******************
左の脳で言葉を理解し、右の脳でそれを映像化するのが読書とすると、一つ疑問があります。
その映像の元は何でしょう。
想像力で映像化すると言っても、全く知らないものは映像化できないのではないでしょうか。
そこで、もう一つ、映像の元を蓄えるための体験活動が重要なのではないでしょうか。
いろいろな体験をすることが、映像の元をつくることにはならないでしょうか。
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まったく、その通りだと思います。
「映像の元」は必要です。
でも、「映像の元」は、テレビやコンピュータゲームの映像ではありません。
これらの映像は、視覚から入ってくるものですが、人間が「世界」を感じるのは、視覚からだけではありません。
音、匂い、皮膚感覚、いわゆる五感を使って、世界を感じるのです。
小さな頃から、そうして取り込んできたすべての感覚が、読書の時の映像化の元になっていると私は考えます。
世界は、「振動」でできていて、可視光線は、その振動のほんの一部でしかないと考える科学もあるそうです。
いずれにせよ、本を読んだ時、脳内で結ばれる映像は、平面的な無味乾燥のものではなく、すべての感覚を伴ったものになっているはずです。
子どもたちは、毎日、いろいろなものから刺激を受けていますが、普段の生活の連続の中では、「慣れ」がその感覚を鈍らせてしまうこともあります。
夏休みなどは、新鮮な感覚に戻る良いチャンスです。
いつもと違う場所に行くだけで、感覚は新しくなり、世界を豊富に取り込めます。
できれば、普段の生活とは「自然感」の違う場所に行くとよいと思います。
ただ、気を付けたいのは、日程を詰め込みすぎてしまわないようにすることです。
子どもは「退屈が嫌い」です。
こんなふうに言うと、逆に、日程を詰め込んだ方がいいのではないか、と思われるかもしれません。
でも、「退屈が嫌い」だからこそ、日程を詰め込んでは逆効果になるのです。
何も決めずに子供を「自然」の中に放り込んでおくと、子どもは退屈が嫌いなので、必ず何かを始めます。
何かを観察し、いたずらし、作り出します。
日程が詰まっていると、ベルトコンベアに乗って運ばれていくだけで、何も感じず、何も思わず1日を過ごしてしまうのです。
子どもは退屈が嫌いだから、と考えて、コンピュータゲームを買い与えた場合は、そのほとんどが、子どもの観察力、創造力の芽を摘んでしまうという失敗に終わります。
「遠く」でなくてもいいし、「長く」でなくてもいいのです。
日常と少しだけ違う自然のある場所へ行って、「ほったらかし」にしてみませんか。