ただ、見つめているだけで
1年生のお母さんから、担任の先生宛てにすてきなお手紙が届きました。
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家の前の道路でボール遊びをしていたら、ボールが用水路に落ちて流れてしまいました。
最近、その用水路にふたをする工事をしたので、中に入らなければ取れず困っていたら、野球のユニフォームを着た男の子が「どうしたんですか」と声をかけてきました。
状況を見て、「長靴はありませんか」と言います。
そして、その子は自らその用水路のトンネルに入ってボールを取ってくれました。
言葉遣いも丁寧で、4年生くらいかと思いましたが、2年生だそうで驚きました。
名前こそ忘れてしまいましたが、とても親切にしてもらってすごく嬉しかったです。
ちょっと良い話でした。
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私は勤め先で、生徒指導主任という仕事をしています。
最近の生徒指導というと、子どもの問題行動や家庭の問題を解決することが主な仕事になってしまっています。
でも、本来は、こうして子供たちの良いところを見つけるのが生徒指導の役目なのです。
この手紙を受け取った1年生の担任の先生は、すぐに私のところへ持ってきてくれました。
この手紙の内容と、すぐに私に見せてくれた担任の先生の気持ちがうれしくて、その日のうちに校内の先生方向けの生徒指導便りにこのことを書きました。
ボールを拾ってくれた2年生はすぐにみつかり、その子は担任の先生や校長に誉められ、嬉しそうでした。
2学期の終業式には、校長がその子をステージに上げて、この話を1000人の子どもの前でしてくれました。
目の前に起こる出来事を、損得だけで判断したり、なぜもっとよくならないのかと欲張りな目で見る人がいます。
もし、この手紙のお母さんが、そういう考えの人だったら、ボールがトンネルに入ってしまったことを不運だと嘆き怖い顔をしていたでしょう。
そうしたら、この2年生は声をかけられなかったかもしれません。
きっとこのお母さんは、声をかけやすい穏やかな顔をしていたのだと思います。
世の中に起こる出来事は、良くも悪くもありません。良いか悪いかは、そこにいる人間が決めるのです。
担任への連絡帳に、こういう手紙を書いてくれたお母さんにとても感謝しています。
そして、こういうお母さんに育てられる子どもは本当に幸せになれると思っています。
もちろん、この2年生を育てているお父さん、お母さんは最高です。
もし、こういう出来事に遭遇したら、担任の先生に手紙を書いてみませんか。
もしそれを迷惑がるような先生や学校なら、厳しい言い方ですが、信頼できません。
子供たちの良いところをたくさん見つけられるお父さん、お母さんになってください。見つけるのは簡単です。
ただ、溢れる愛を持って見つめているだけでいいんです。