うちの子のよいところは

 家庭訪問では、「お子さんのよいところを教えてください」と前もってお願いしています。

 お父さんと話し合い、10分では話しきれないほどたくさん子どものよいところを紙に書いて待っていてくれるお母さんもいますが、ほとんどのお母さんは、「さあ、どうでしょう。いいところと言われても困ります」というお母さんが多いです。

 日本人が日本人に身内の自慢をするのは、やはり民族の性格上、難しいのかもしれません。

私はずうずうしいので、娘や息子を、すぐ自慢してしまいますが、「上手に言わないと相手に嫌な感じを与えるのではないか」と心配される方が、とても多いようです。

 でも、お父さん、お母さんから、「うちの子は、本当にいい子で…」と素直に言われると、聞いているこちらも、うれしくなるものです。

 「私が仕事の都合で帰りが遅くなった時には、家事をどんどんやってくれて、本当に助かります。」とおっしゃったお母さんの顔や声音には、娘を持った「幸せ感」があふれていて、聞いているこちらも幸せになりました。

 「この子がいて、自分は本当に幸せだ」と思いながら、お子さんのよいところを言ってくれる方のお話は、聞いていて、とても気持ちのよいものです。

 ぜひ、担任の先生に、お子さんのよいところを、幸せそうに話してください。

 今回、とてもすてきなお母さんに会いました。

 「うちの子のいいところ、と言われて何も思い浮かばなかったのですが、先日、とってもうれしいことがあったんですよ。」と、そのお母さんは話し始めました。

 「夕食の支度をしていたら、急に、手伝うことない?と言って、テーブルを拭きはじめました。今まで、こんなこと、なかったような気がして、とてもうれしかったです。」

 実は、私もこのことを話したいと思っていました。

その子は、給食の時、一所懸命働く姿が素晴らしいのです。

どうすればこんなふうに進んでみんなのために仕事をするようになるのか、家庭教育の秘密を聞きたいと思っていました。

 きっとこの子は以前から、きちんと家の仕事をしてきたはずです。

でも、お母さんにこういう言われ方をすると、まるで、私が担任するようになってから、その子が成長したような気分になって、ちょっとうれしく感じます。

 でも、何よりも素晴らしいのは、自分の子のよいところを見つけた時に、うれしかった、という言葉で表していらっしゃるところです。

この子が生まれてくれて、幸せだなあ。少しずつ成長してくれるのを見るのが毎日うれしいなあ。こんなふうに感じて子育てをしているから、このお母さんは、自分の子どもの行動を見て「うれしい」という言葉が自然に出てくるのでしょう。

 子どもが生まれてくれたことに感謝の気持ちを持つ。

子どものおかげで自分の今が本当に幸せだ、と思うことが、子どもの自慢を素敵な言葉で表すこつのようです。

この子がいて自分は本当に幸せだ、という気持ちで心をいっぱいにして先生と話してみてください。

お子さんの素晴らしさは、先生にまっすぐ伝わるはずです。

 また、「同じクラスの○○君は、いつも元気に挨拶してくれて、本当にいい子なんですよ」と他の家の子を褒めるお母さんもいました。

「自分の子のよいところは、なかなか言ってくれないけれど、子どものよいところを見つけるのが得意なお母さんだから、きっと自分の子のよいところも、しっかり観ているのだろうな」と思えてきます。

 とにかく、「この子がいて、私は幸せ」という気持ちをいつも心に置いて、お子さんのことをお話しくださいね。

幸せな気持ちが伝われば、聞いている人も、とても幸せになれます。

 その幸せそうな笑顔と声で、その子が、どれほど大事に育ててもらっているかが、こちらには、よくわかります。

 「この子を授かって、本当に自分は幸せだ」

 子どもも大きくなってくると、そのことを、直接子どもに言うことは、なかなかないのが日常生活です。

しかし、実は、私に子ども自慢をしている時に表れたお父さん、お母さんの笑顔と幸せそうな声は、言葉を越えて、日常生活の中で、そのことを子どもに毎日伝えているのです。

(たとえ、叱っている時も、です。)

 親自身も意識していない幸せの「気」を、毎日浴びている子は、必ず良い子に育ちます。

 今年も、幸せそうなお父さん、お母さんとたくさん出会えました。

教室で子どもの顔を見ると、その時のお父さん、お母さんのことを思い出し、やる気がわいてきます。

 お父さん、お母さんの、子どもを語る時の幸せそうな顔と声が、子どもの心ばかりでなく、周りの大人の心も動かし、それが、お子さんをさらに良い子にしていきます。


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