本当の勉強時間
6年生になったら1日○時間、中学生になったら1日○時間、…。
こんなふうに、家庭学習の時間について言われることがあります。
重要なことではあると思いますが、その○時間、机に向かっていたからといって安心できないのは、お父さん、お母さんもよく知る所ですね。
同じ1時間、同じページ数の「漢字の書き取り」を真面目にやったA君とB君が、同じだけ力が伸びるかというと、そういうわけにもいきません。
同じ時間、同じ量の勉強をしたのに、力の伸びが違うのは、実は、本当の勉強時間が違うからです。
人間の脳は、一瞬、一瞬、違うことに注意が向いたり、違うことを考えたりしてしまいます。
これは、きっと、生き物として自分の命を守るための本能です。
自然界では、ほとんどの生き物が、捕食者の脅威にさらされています。
周りを気にせずにのんびりと食事をしていると、自分が捕食者の食べ物になってしまいます。
ですから、ひとつのことに集中してしまうよりも、一瞬、一瞬、いろいろなことに目が向く方が、能力が高いということです。
まじめに書き取りをやっているようでも、脳は、一瞬、一瞬違うことを考えています。
漢字に集中している時間と、他のことを考えている時間を、それぞれ合計すると、漢字に集中している時間は意外に短いのかもしれません。
1時間のテレビ番組を録画して、コマーシャルをカットしてみると、番組そのものが意外に短いものであることに気づきますが、これと似ています。
勉強する時、このコマーシャルに当たる部分が短ければ短いほどいいということになりますが、そこを目指すと、ヨガの行者の修業を目指さなくてはいけなくなりそうです。
そこで考えられる方法としては、「コマーシャル」も漢字に関することになればいいのではないかということです。
例えば、自動車に関する番組で、お菓子や洗剤のコマーシャルが流れたら、その時間は自動車のことを忘れてしまいますが、コマーシャルが自動車会社や自動車関連部品の会社の宣伝で、しかも、新しい情報だったりしたら、自動車への集中時間は増すわけです。
勉強で、そうなるためのキーワードは、やはり、「好き」とか「面白い」です。
漢字の成り立ち、漢字の使い方に興味を持っていたり、書き方のこつがつかめて上手になっている自分がうれしかったりする時には、「コマーシャルの時間」も漢字のことを考えているというわけです。
同じ時間、同じ量の勉強をしていても、漢字を面白がって書いているA君は、「宿題だから」と思い、時間に耐えて机に向かっているB君より、何倍も力が伸びていると思います。
6歳前後までは、大人が「面白い」を与えれば、どんどん伸びていきます。
それ以後、特に10歳を越えてからは、面白さがわかるためには、「できる」まで我慢させて続けさせる厳しさが必要です。
10歳を越えた時、ここを間違えると、「与えられるのを待つだけの人間」に育ってしまいます。
10歳までは、大人が「面白い」をどんどん与えましょう。
11歳からは、少し我慢させて、「続ければできるようになる。できるようになると楽しい」ということを身に沁みさせましょう。