6年生は年寄り
6年生は、12歳、伸び盛りの子ども。本人達を含めて、誰もが、そう思っているでしょう。
特に努力しなくても、50m走で1年生に負ける6年生はいないのですから、まだまだ自分は努力しなくてもどんどん伸びる、とか、「やればできる」などと考えていると思います。
しかし、12歳の子どもは、6歳の子どもと比べたら明らかに年をとっているのです。
一輪車に乗れない6年生の自分と6歳の時の自分、どちらの方が早く一輪車をマスターするか、と質問をすると、「きっと6歳の自分」と答えるのですが、この例を挙げて、「6年生は、年寄りなんだから、今までのように、食べて寝るだけでは進歩しない、努力しなさい」と子どもたちに言っても、なかなか通じません。
ところが、先日、彼ら6年生が納得せざるを得ない出来事が起きました。
毎年12月に行われる校内持久走記録会。4年生以上は、5分間で走れる距離を測ります。
学級によっては、マラソンカードなどを作り、休み時間に自主的に楽しく走れるように工夫してくれる先生もいますが、私のクラスでは、そんなことはしません。
安全のために、1か月ほど前から、体育の時間に練習をしますが、それだけです。
今年の記録会当日は、奇跡のように無風で、寒くもなく暑くもなく、この日にベスト記録を出さなくて、いつ出すの、と思える日でした。
走る前には、「幸運というのは、こんなふうに突然目の前にやってくる。
ここで成功できるように準備を怠らないようにしておくことが大事だ」などと子どもたちに話をするくらい、絶好の持久走日和です。
しかし、結果は、クラスの半分の子が、5年生の時の記録を下回りました。
5年生の昨年までは、前年の記録を下回る子はいませんでした。
1年下の子(自分)に負けるなんて有り得ない。誰もが、そう思っていたでしょう。
しかし、よく思い出すと、5年生の時の担任の先生は、全員が進んで練習するように上手にクラスの雰囲気を作ってくれていて、子どもたちは自分で気づかぬうちに、記録会までに沢山の練習を休み時間にしていたのです。
食べて寝ているだけでは、もう自然に力が伸びる年齢ではない。
今回は、実感してくれたと思います。
クラスの中には、この持久走記録会を目指して、家に帰ってから自主的に練習してきた子もいます。
もちろん、その子たちは、奇跡のような1日に記録会が行われた幸運を、たっぷりと享受し、6年間の自己最高記録を達成しました。
その子たちの喜ぶ顔も、努力をしなかった子にとっては苦い良薬になったと思います。
年をとり、6歳の頃より「伸びる力」が劣ってしまった6年生ですが、それでも、まだまだ12歳。大人とは違います。
食べて寝るだけで身長は伸びるのですから、ほんの少しの努力さえすれば、ぐんぐん力が伸びるのです。
しかし、それも、18歳(身長の伸びが止まる年齢)まで。
その後は、「努力の費用対効果」が、どんどん下がっていくことを自覚せざるを得なくなります。
努力のすべてが自分を伸ばす栄養になるのは、あと6年間だけ、と子どもたちには話していますが、真剣に受け取っている子が何人いるかは、わかりません。
誕生日がくれば、みんな、一つずつ「年寄り」になりますが、その分、努力を忘れずに、また、素敵な1年にしたいものです。