勉強が好きな子だけが
「どうすれば勉強ができるようになりますか」…究極の質問です(笑)。
でも、答えはシンプルです。勉強が好きな子だけが、勉強ができるようになります。
だいたい、人間というのは、好きなことしかしないのです。
こう言ったら、あるお母さんから、「私は好きでもないのに、毎日家族のご飯を作っていますよ」と言われました。
そのとおりですね。しかも毎日食べて飽きない食事を作るということは大変なことです。
どのお母さんも、みんな料理上手です。
ただ、日本中のお母さんが家族のご飯を作る中、時々、料理コンテストでプロを抑えて優勝したり、そのまま料理家になってしまうお母さんもいます。
その人たちは、嫌々、毎日料理をしていたか、というと、多分、そうではないでしょう。
きっかけはともあれ、料理をすることが楽しくて、好きなはずです。
お母さんが、毎日、家族のために食事を作るのと同じように、全国の子供たちが勉強をしています。
でも、ぐんぐんできるようになる子と、そうでない子がいます。
ぐんぐん伸びる子は、勉強が楽しくて、勉強が好きで、たくさん勉強している子です。
勉強が好きな子は、勉強をたくさんするから、勉強ができるようになり、勉強が好きではない子は、勉強をしないので、勉強ができるようにはならないのです。
だとしたら、どうすれば勉強が好きになるか、が、問題ですね。
どんなことでも、楽しければ好きになります。
勉強も同じです。と言うと、子供のことを知らない昔の教育評論家は、「先生が楽しい授業をすればいい」と言います。
それを聞いて、さらに勘違いする人が、エンタテイメント的な授業をイメージしてしまいます。
しかし、それでは、子供たちは、本当に勉強を好きにはなりません。
エンターテイメントを楽しむ、というのは、基本的に受け身の楽しみです。
もちろん、楽しいことに間違いはないのですが、こういう楽しさだけでは、勉強を好きにはなりません。
能力を高めるほど好きになれる深い楽しみというのは、受け身のままでは決して味わえないのです。
もちろん、最初は誰でも、受け身の楽しさを味わうことから始まるでしょう。
でも、楽しさというのは、成長するにしたがって変わってくるような気がします。
4年ごとの成長の節目にしたがって、「楽しい」の中身は変わってくるのではないかと思えるのです。
それぞれの節目に合った楽しさを味わうことで、脳は勉強好きになっていくようです。
6歳までの脳は、とてもフレッシュで、見えるもの、聞こえるもの、それが楽しければ、すべて吸収してしまいます。
しかし、6歳を越えると、脳は少しフレッシュさを失いますので、学校に入って、見えるもの、聞こえるものの中から、あるものを選び一定の方向に向かって勉強をしなければ、情報をもれなく吸収できなくなります。
10歳を越えると、さらに脳が年老いていくので、自分はできるようになるためにやるのだという精神力で、脳の働きを差さえなければなりません。
14歳を越えたら、精神力だけではなく、自分で計画性をもって勉強をしていかないと脳は働いてくれなくなります。
ドライブに例えて、4年区切りの変化を考えてみます。
6歳までは、後ろの席に乗っているようなものです。どこへ行くのかも知らずに、後ろの席で楽しく過ごしていると、目的地に着きます。
とにかく、そこにいるのが楽しければ、新しいもの(目的地)は手に入ります。
6歳を越えると助手席です。自分では運転をしませんが、目的地に向かって通過する場所をよく見るようになり、それが楽しさにつながります。
10歳を越えたら、運転席です。でも一人では危ないので、助手席には大人が乗って、面倒を見てくれます。
それでも自分で運転するのはわくわくします。
14歳を越えたら、ついに一人で運転です。どの道を通っていくか、など、今までの経験を生かして、自分で計画を立てて、自分の責任で運転します。
自分の力で目的地に着く達成感ほど楽しいものはありません。
18歳を越えたら、そのドライブの技術を駆使して、いろいろなことに挑戦します。
勉強でも、このように、年代ごとの変化に合わせて、学ぶ楽しさが変わってきます。
では、4年ごとに区切って考えた時、それぞれの年代で、どんなふうに勉強すれば、子供たちは「楽しい」と感じるのでしょうか。
6歳までの子は、見るもの聞くものすべて吸収するので、目の前に新しいものを与えれば、楽しくて楽しくて、ぐんぐん能力は上がります。
新しいもの、不思議なものに反応するのは、危険なものを回避するという生物が持っている根源的な能力なのでしょう。
中でも、見る、聞くだけでなく、触れる、自分の体を動かすといった、五感すべてを刺激する新しいものは、能力をぐんとあげます。
6歳を過ぎても好奇心は大きなモチベーションになりますが、それに付け加えて、「自分は勉強しているのだ」という自覚や「自分はできる」という自信が、楽しさの素になります。
小学生に関して、好奇心を刺激すれば勉強に取り組むようになるとしか言っていない昔の教育評論家は、子供をみていないのだと思います。
この4年間に、少しがんばらせて、「みんなの前で発言できる」「字が上手」「計算が速い」といったことに自信を持たせれば、勉強が大好きのままでいられます。
ですから、ここでは、「九九を全部言えたら、お風呂から出ましょう」「逆上がりができるようになるまで、夕食前には必ず鉄棒にぶらさがりなさい」というように、ちょっと無理をさせても、学んでいるという自覚や、自分にはできるという自信が持てるような力を身につけさせることが大事です。
10歳を越えると、原因と結果につながりのあることがわかってきます。
自分が頑張ったらできるようになった。
これが、楽しく感じられるようになります。ですから、10歳から先は、無理に引っ張る指導をするのではなく、自分ががんばったからできるようになったと思える(最初はそれが本人の錯覚でも)指導に変えていかなければいけません。
こうした3段階をていねいに積み上げていくと、14歳、中2の夏には、自分からやろうとする気持ちと自分から始める力が発揮できるようになります。
自分が仕掛けたこと、すなわち、自分で計画し実行したことが、自分の力を伸ばしていると実感する楽しさを味わえる年齢になるのです。
人間は、好きなことしかしないので、好きなことしか上達しません。
子供は大人になるまでに、「楽しい」とか「好きになる」ということが微妙に変化していくので、それに合わせた指導をしてやれば、人生が「好き」でいっぱいになります。
さて、お父さん、お母さんは、どんなことをするのが好きですか。
お父さん、お母さんが、幸せそうな顔で(勉強と全く関係ないことでも)好きなことの話をするのを聞くだけでも、お子さんは、「好きになるって、いいなあ」と思い、好きなことが増えるかもしれません。
読者の方からのお便り*************
受け身の楽しさだけでは、勉強好きになれないというのは、なるほどです。
乳歯が抜け始めているこの時期にふさわしい受け身でない楽しさを、味あわせて、本当の勉強好きにしたいものです。
勉強好きにして、自ら能力を高めるようにしていけたら最高ですね。
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