楽じゃないけど好きだから
最初の書写の時間は、6年生でもさっそく平仮名のおけいこです。
「を」「え」…と数文字こつを教え、後は興味のある字を研究してレポートを書きなさい、といいました。
レポートといっても、大学生が書くようなものではなく、A4の紙に一文字、平仮名の書き方のこつを書いてくる、というものです。
どの子もまじめに取り組み、一人、1、2枚のイラスト入りのかわいいレポートができあがりました。
レポートは、教室に掲示しておきます。
授業中にできなかった子もいたので、週末の宿題にしました。
今年のクラスもみんなまじめで、全員がきちんと提出しました。その中に驚くレポートがありました。
「全部やってきました。」そう言ったAさんの手元には分厚い紙束が。
そうです。
Aさんは、すべての平仮名について、1枚1枚丁寧にまとめてきたのです。
1枚としていい加減にやったものがなかったので、相当時間がかかったと思います。
思わず「大変だっただろう」と口にしそうになって、やめました。
代わりに「面白かった?」と聞きました。Aさんは、「大変だった。でも面白かった」と言いました。
この量の作業ではさぞかし大変だったと思います。
この大変な量の作業を彼女はどうやってやりとげたのか。
根性?…、もちろん、我慢強さも必要です。
昔は、私も、「根性さえあればなんだってやれる」と思っていたし、子どもにもそう言ってきました。
でも、最近、やっとわかってきました。苦しいことを苦しいとしか思っていない人はやりとげられないのです。
傍目から見て大変なことでも、(もちろん本人にとって大変なことでも)、それが楽しければ、やれてしまうのです。
楽しい時間はあっという間に過ぎます。
他人から見ると、「よくそんなに長い時間…」と思うことも、楽しんでやっている人には、あっと言う間の楽しい時間でしかないのです。だから、やりとげられるのです。
五年生だったBさんは、社会科の授業の時、一人でこつこつと教科書の畜産業の部分を自分なりにノートにまとめて、突然「自主勉強をした」と言って持って来ました。
私なら絶対にやらないだろうという分量のレポートが書かれたきれいなノートがそこにありました。
彼女は当時、獣医になりたいという夢を持っていました。
信じられないくらいの分量の勉強ですが、彼女はそれが楽しかったのだと思います。
楽しく勉強する、楽しく仕事をするというのは、手を抜くということではありません。
その内容や作業がおもしろくて仕方がないというのが、楽しい勉強、楽しい仕事でしょう。
お子さんは楽しそうに家庭学習に取り組んでいますか。
もし楽しそうなら大丈夫です。
力は伸びます。
楽しいと感じている時、脳は絶好調だからです。
もし楽しそうではないのなら、何かが足りないのだと思います。
1年前、2年前に身につけておかなければならないスキルが、まだ完全に手になじんでいないのかもしれません。
何かが多すぎる場合もあります。
周囲からの期待が大きすぎて勉強の内容に集中できないのかもしれません。
とにかく、楽しそうかどうか、お子さんの顔を見てください。お父さん、お母さんが仕事や家事をしている時の顔と同じくらい楽しそうですか。