不思議をきちんと口にする
3年生の国語の教材に「めだか」という説明文があります。
小さなめだかが、どうやって生き延びているかが書いてある説明文です。
めだかは恐ろしい敵から身を守るために、
@ 敵のあまりいない水面近くでくらしている。
A 敵が近づいてきたら、さっと逃げるスピードを持っている。
B 敵が近づくと、川底の砂を巻き上げ、隠れる。
C 危険がせまったら、いっせいにあちこちに逃げ、敵の目をくらます。
のだそうです。
ここを読んでいると、A子さんが、「@でせっかく敵の少ない水面近くにいるのに、なぜ、わざわざ川底まで行くの?」と言いました。
これは、とてもよい質問です。
こういう子は、もともと頭がいいのでしょうか。
そうかもしれませんが、そんな子も、ほったらかしにしたら、こういう質問ができる子にはなりません。
子どもはいろいろな体験の中で、不思議に思うことをたくさん見つけます。
これは自然なことのようです。
しかし、それをきちんと疑問として話せるかというと、それは自然まかせでは無理です。
では、どうすればいいかというと、大人が「これって不思議だよね」と例文をたくさん言ってやればいいのです。
お子さんが見つけた不思議なことでもいいし、お父さん、お母さんが見つけたことでもいいので、不思議に思ったことは、こんなふうに疑問として言うことができるということを、大人が例文で示してあげましょう。
そうすれば、子どもは、自分の不思議に思ったことを、きちんとした言葉で話せるようになります。
最近、お子さんと散歩する時間はありますか。
日没が遅い時期なら、夕方の散歩は気持ちがよくて、「不思議」にもたくさん出会えます。
さて、A子さんの質問が、なぜよい質問なのなのでしょうか。
めだかは敵のあまりいない水面近くに「くらしている」のですが、「敵が近づいた時」は緊急事態なので、川底にも行くのです。
A子さんの質問のおかげで、重要な事を読み飛ばさずにすみました。
子どもたちは、こういう細かい言葉に気づきながら、読書生活を豊かにしていきます。
文章のおおまかな意味がわかることも重要ですが、小さな言葉の中に隠れているいろいろなことを見つける力が身につくと、心も豊かになります。
怒っている時、哀しい時、持っている言葉が足りないと、あとは他人や自分への暴力に訴えるしかなくなります。それによって起こる事件は後を絶ちません。
子どもが読書をすれば、それだけで語彙が増えると勘違いされやすいのですが、子どもの語彙は読書をしただけでは増えません。
大人と話をしたり、授業で友達と意見を交換したりする中でこそ語彙は増えていくのです。
ですから、小さい頃から、一人でテレビ、ビデオを見たり、ゲームをしたりする時間が長い子は語彙が増えず、それによって心は枯れ、荒れていきます。
テレビ、ビデオ、ゲームが悪いのではありません。
子どもが一人きりでやるのが毒なのです。
大人とわいわい言いながらテレビを見たり、ゲームをしたりすれば、子どもの語彙は増えていきます。